來編 現実問題
こうやって分かったようなことを延々と言ってる俺だって、完璧に自分を制御できてるわけじゃない。
むしろ、制御できてないのをなんとか制御するために自分に言い聞かせてるだけだし。
なので、自分の憂さ晴らしのために他人を傷付けようとする輩に対しては思うところもありつつも、基本的には他人を馬鹿にしないように心掛けてるつもりだ。
まあ、それも完全にはできてないと思うけどな。
と、それはさてさて置いて、昨日の時点では仮設だった<家>の外装はほぼ完成し、夕方までには内装に取り掛かっていた。
明日にはそれもほぼ完成するだろう。
「別にそこまでいらないかもと思ってたけど、こうしてできてくるとワクワクするね」
今日の作業を終えて夕食にした時、
「うん。高揚感があるよね。向こうで家を用意してもらった時も嬉しかったけど、今度は少佐や
ビアンカが微笑みながら応える。
「僕は、二人が喜んでくれているならそれでいいよ」
そして彼の隣には、
しかも、早々に子作りしたいんだろうな。やたらと体を触ってる。
「はは……」
ビアンカはそんな
人間なら、
『破廉恥な!!』
と眉を顰められるところだろうが、野生の場合は、チャンスとあれば躊躇わずに行かないと、いつ、命を落とすか分からない。人間ほどは<段階>なんか踏んでる余裕はないんだ。
しかし、
「……」
分かっているつもりでも、ビアンカにとっては複雑なようだな。
アラニーズである彼女にとっての<生殖>は、基本的に
人間の体にも見える部分は、しっかりと子宮や卵巣も含めて再現されているものの、残念ながら機能はしていないのを、シモーヌとセシリアが確認してるそうだ。
つまり、クモに似た体の方に生殖機能があり、卵胎生であると……
加えてここまで形質が異なると、ほぼ人間である
これも、正直なところ彼女にとっては<認めたくない現実>だろう。
それを突き付けられたビアンカの体を、
「ビアンカ……私は今のビアンカを愛してるよ……」
「ありがとう……
<認めたくない現実>を受け止めるには、支えになるものが必要なんだと思う。それもなしで現実と向き合えるほど人間という生き物は強くない。
俺だってそうだ。
エレクシアが、
その現実を認めなきゃな。
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