來編 現実に則した対応

ミレニアムファルコン号でコーネリアス号に到着したあかりは、早速、手馴れた様子で、モニカとハートマンが用意してくれていた資材をチェック。それから野菜の収穫を始めた。


ちなみにこれまではコーネリアス号のプラントのみで野菜を収穫してきたが、今後は、この惑星に自生していた植物をベースに品種改良した作物を、野路栽培という形で栽培していくことも目指していく。


人間が増えてくるとコーネリアス号のプラントだけじゃいずれは賄いきれなくなるからな。六十人の隊員が普通に生活していけるだけのキャパシティはあったものの、設備のメンテナンスも完璧じゃないことでいつ機能できなくなるか分からないし、余裕があるうちに次のステップに向かいたいということだ。


ちなみに畑作りについては、そう達の獲物となる草食動物達を定着させるためにドーベルマンDK-aを使って<畑>を作っていたノウハウが活かされることになる。品種改良もその傍らで試験的に行っていたものだ。人間は明確な目標と結果が伴わないとそういう地道な作業を続けるのは苦痛にもなるが、ロボットはその辺り、まったく気にしないでやってくれる。


これもまたAIとロボットの強みだな。実際、人間社会でも、先の見えない地道すぎる基礎研究に伴う実験なんかは、多くがロボットが行ってくれているそうだ。ちなみに高度シミュレータでも並行してシミュレーションを行ってるそうだが。


そこまでじゃないにしても、コーネリアス号のAIとそれによって制御されているロボット達は地道な作業を延々と繰り返してくれていた。俺はそれに感謝したい。感謝した上で、これまでやってきたことを何一つ無駄にせずにやっていかなきゃな。


社会基盤が脆弱ゆえに、油断や驕りは、即、命取りになるのが、この世界だ。


だったらその現実に則した対応をするのは当然だろう。




あかりが野菜の収穫を終えたところに、新しい集落に行っていたローバーが戻ってきた。コーネリアス号のAIが操作しての無人運転で。これも人間社会では基本的に禁止されてることだが、ここじゃ関係ないからな。


公道を走らせる場合、人命に関わる緊急事態の場合を除いてだが、あくまで<運行責任者>としての人間が搭乗しないといけないんだ。人間以上の働きができるといっても、AIもロボットもあくまで<道具>だから、責任を負わせることができないし。


で、戻ってきたローバーに、コーネリアス号がマニピュレータを使って資材を積み込んでいく。同時に、あかりも野菜や日用品とかを積み込み、今度は彼女の運転で新しい集落に向けて出発したのだった。


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