來編 独自

新暦〇〇三十二年五月五日。




こうして俺達の集落で暮らすことになった久利生くりうだったが、職業的なものもあってか、俺達から情報を仕入れつつも、もう翌日から独自に周辺の調査を始めていた。


「すまない。君達が提示してくれる情報を疑うわけではないんだが、自分で確認せずにいられないんだ。職業病かもしれないな」


爽やかなイケメンスマイルを浮かべながらそう言われると、不思議と、


『まあそうだろうな』


と思わされてしまった。特に彼は軍人で、かつ部隊を指揮する立場でもあるからか、情報の裏を確実に取ることを心掛けてるそうだ。


さすがにすべての情報を自分でというわけにはいかなくても、どうせ他に任務があるわけでもなし、今後も自分やシモーヌやビアンカのような事例がある可能性も否定できない、いや、俺達が探知できる範囲内ではまだ三件目だというだけで、この台地、さらにこの惑星全土ということであればそれこそ毎日のように生じてるかもしれない同様の事例に対応するための準備を整えたいそうだ。


無論、全員を救えるなんて思ってるわけじゃないにしても、やっぱりどこか他人事な俺とは、『防衛主任だった』彼とは立場も違うだろうし。


そんな彼の警護役にドーベルマンDK-a号機を随伴させる。


もう製造されてから結構時間が経ったそれは、メンテナンスを行っているとはいってもそれなりに年季が入ってる印象を受けるようになってきていた。だが、今でも俺にとっては頼りになる<仲間>だから、任せられる。


久利生くりう自身も、


「私は、通常の兵装を貸与していただければ構いません」


と言ってたし。


正直、彼に拳銃と自動小銃とナイフを装備させれば、こちら側では脅威になる可能性があるのはマンティアンとアクシーズくらいだろう。


どちらも、早期警戒網の中で活動するだけなら接近する前に対処できる。ましてや、めいじょうしょうすいの縄張りの中ならそれこそ危険なのは、めいの旦那のかくくらいのものだ。


そのかくも、ドーベルマンDK-aについてはいまだに警戒していて決して近付こうとしない。


だからこれだけでも想定しうる事態すべてに対応できるということだ。


ただ、ビアンカとしては、


「少佐が行くなら私も…!」


と申し出ずにはいられなかったようだけどな。


錬是れんぜの許可が下りるなら私は構わないが」


久利生くりうはそう言いながら俺に視線を向ける。


が、俺がそれを許可しない理由は今のところないので、


「いいよ。せっかくだしな」


と許可する。


すると、


「は~い! じゃあ、私も私も~!」


そんな風に声を上げたのは、あかりだった。


まあ、好奇心が強いあかりがそれを言い出すのも別に不思議じゃないか。


と言うわけで、


久利生くりうさえ迷惑じゃなければ」


俺は応えたのだった。


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