來編 誰か
『人間です!!』
エレクシアのその声に、ザワッとしたものが背筋を走り抜ける。
正直、『またか』と思ってしまう。
とは言え、河への落雷なんて、ここまですでに数百回確認されている。その中で、シモーヌやビアンカのことがあったからって、
いや、一パーセント近くあるだけでも実はものすごく多いんだろうけど。
ただ、実際にそれくらい頻繁に起こってなきゃ、こんなに何種類もの新しい生物が繁殖に成功して定着するのは難しいとも考えられるわけで。
まあその辺りのことは俺があれこれ考えても仕方ないだろう。
今はとにかく、エレクシアが言った<人間>だ。
もっとも、彼女は俺達に配慮して<人間>と言ったものの、厳密には彼女はシモーヌのこともビアンカのことも、それどころか
彼女の、と言うかAIの認識としては、人間の範疇には含まれないんだ。
でも同時に、人間に準ずる存在だとは思ってくれてるから、少なくとも俺に対して敵対行動を取らない限りは守ってもくれる。
今回についても、
「保護しろ! エレクシア!」
俺が命じると、
「承知しました」
と応え、救急救命モードにて現場に急行してくれた。
たぶん、俺とエレクシアが出掛けてない時にそうなるってことは、今回の<誰か>は運が良かったんだろう。
こういう言い方は好きじゃないが、
『生き延びる運命にあった』
ってことかもしれない。
今回の河は、俺達に馴染みの深い方の河と比べると倍ほど距離はあるものの、エレクシアにしてみれば大した違いじゃない。
「何があったの!?」
俺が
ちなみに、俺は今、<シモーヌの家>として建てられた方の家で寝泊りしてる。つまり、シモーヌの家だったものが俺と彼女の家になってるんだ。元々の家は、
って、これも余談だったな。
「また、例の不定形生物が誰かになったらしい」
シモーヌに対して俺が告げると、彼女もそれだけでピンと来たようだ。
「今度は誰……?」
『今度は誰』と彼女が言ったとおり、十中八九、コーネリアス号の乗員の誰かに違いないだろう。
この時、俺の頭によぎったのは、<コーネリアス号乗員、
もし、彼が今のシモーヌと同じ形で現れたとしたら彼女はどうするんだろうと考えてしまったんだ。
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