翔編 まだやるつもりか……!?

『気を失っているだけですね』


地面に倒れ付した龍然りゅうぜんの詳細なバイタルサインを取得したエレクシアがそう告げたことに逆に戦慄を覚えながらも、死んでなかったことについては、正直、ホッとした。


そうして俺は再びローバーを走らせ、アリゼドラゼ村に着く。


龍然りゅうぜんはまだ気を失ったままだったが、念のため俺はローバーの中で待機する。


りょうの姿はもうすでにエレクシア達の傍にはない。倒れている龍然りゅうぜんにさらに追い討ちを掛けようとするりょうをエレクシアが手をかざして制し、勝負が付いたことを察して、今は自分の仮の巣で体を休ませていた。


いや、よく頑張ったよ。


ドラゼは、補充された物資の中からアリゼのカバーを持ってきて、交換していた。待機している時間も無駄にしない辺り、さすがにロボットだな。


すると、十分ほどして、


「気が付きました」


エレクシアが言った。


「!?」


瞬間、龍然りゅうぜんの体が跳ね上がり、エレクシアに襲い掛かる。まだやるつもりか……!?


が、油断などしていないエレクシアの前に、龍然りゅうぜんの体が吹っ飛んだ。エレクシアが蹴り飛ばしたんだ。


吹っ飛ばされて茂みの中に突っ込んだと思うと、


「離れていきます。撤退しました。状況終了です」


ようやくエレクシアが宣告。戦闘モードが解除された。どうやら、龍然りゅうぜんにしてみると、背中を見せて逃げ出すとか危険なことはできないという判断だったようだ。だから逆に、エレクシアの攻撃を利用して間合いを取ったらしい。


どこまでもとんでもない奴だったな。


「ふう…やっとか……」


溜息と共に声が漏れ、俺はローバーのシートにもたれこんだ。もうクタクタだ。単に見守っていただけだというのに。


それは、同じくタブレットで成り行きを見守っていた、シモーヌ、ひかりあかり、ビアンカも同じだったようだ。


「はあ~…」


「良かった…」


「とんでもなかったね」


「恐ろしい敵でした」


それぞれ緊張が解けた様子だった。


あかりとビアンカも調査どころじゃなかったようだな。


とは言え、結果としては誰も犠牲にはならず、大勝利ではあったよ。この困難なミッションを成し遂げてくれたエレクシアには感謝しかない。


もちろん、アリゼとドラゼにも感謝感謝だ。


「ありがとう。本当に感謝してる」


そんな俺の言葉に、


「いえ、これが役目ですから」


と、エレクシアとアリゼは声を揃え、ドラゼは敬礼を返しただけだった。


まったく。変わらないな、お前らは。




いずれにせよ、これで<超カマキリ人間マンティアンの襲撃>は終わった。この後、龍然りゅうぜんはアリゼドラゼ村に近付くこともなかった。さすがにメリットがないと学習したんだろう。あそこまで手間を掛けて獲物を求める必要もないしな。


そういう合理的な判断をしてくれるだけ、実は厄介なタイプの人間よりも野生動物の方が扱いやすいって気がするよ。


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