翔編 輸送路

実に呆気ないくらいに簡単に完成したワイバーン一型だったが、それはまあ、これまでの蓄積があればのことだと思う。


新規で作った布製の翼だって、それ自体は、ハンググライダーとかウイングスーツとかのアクティビティ用のに加え、それこそキットを買ってきて自分で組み立てて作るマイクロプレーンが市場に出回っててそれらのノウハウがコーネリアス号や光莉ひかり号のAIの中にあってそこから流用すれば即OKだったことでやたらと試行錯誤する必要がなかったからだし。


だからつくづく、俺達のやってることって、<サバイバル>じゃなくてただの<自給自足>&<DIY>なんだなっていうのを感じるよ。


マジでサバイバルを生き抜いた人間が見たら『ふざけんな!』と怒られそうだ。


なんてことを考えてるうちに、二時間ほどでワイバーン一型はコーネリアス号からアリニドラニ村へと到着した。


村がある丘の麓の荒野に着陸。<滑走路>は、ドラニがあらかじめ大きな石などをどけてくれて用意してくれていた。


その一部始終も、今日はイレーネと一緒に調査に出てたあかりもタブレットで見てたらしい。


「すげーっ! すげーっ!」


って興奮してた。


「乗ってみてーっ!」


とも。


いや、さすがに人を乗せて飛ばすことまでは想定してないから。だから積載重量は四十キロくらいで設計してもらったから。


ただ、ようの娘であり、タカ人間アクシーズの血を引くあかりは、もしかすると本能的に飛ぶことを体が欲してたりするのかもしれないな。


だから、ワイバーン一型をまず運用してみてデータを蓄積。それを基にいずれ有人飛行ができるタイプを開発してもいいかもしれない。


ということで、


「いつかは乗れるのを作れるようになるかもしれないが、今のところはさすがにそこまで無茶はできない。ごめんな」


と、勘弁してもらう。


「ちぇーっ! ぶーぶー!」


不満そうに口を尖らせるあかりだったが、こういう言い方をしている時には、不満なのは本心でも理解はしてくれてるんだ。


そうだな。アクシーズとしての血が空を求めるなら、いつかそれを叶えてやりたいと思う。そのためにも今は、ワイバーン一型を運用して、詳細なデータを蓄積しないと。


こうして、空路による物資の輸送路が確立した。


一日四便。四往復だが、ロボットなのでその辺りはまったく問題ない。むしろ早々に運用データを蓄積するにはこれくらいでないとな。


ちなみに、空路のデータについてはすでに母艦ドローンが散々集めてくれてたので、大気の状態などはすっかり把握できている。ほとんど起伏のないほぼ真っ平な台地の上は風が巻いているような箇所が基本的になく、スコールなどの天候変化にさえ注意を払えば、危険らしい危険はないんだ。


ひょっとすると空路の方が安全かつ確実かもしれないな。


だから余計に、コーネリアス号のヘリが使えないのが惜しい。


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