翔編 インフラ
アミダ・リアクターが普及した今の人間社会では、<大規模停電>なんて、もはや都市伝説扱いだ。
二百年を超える人生の中でそんな経験をしたことのある人間さえ、滅多にいない。
何らかの自然災害で自分の家のアミダ・リアクターが使えなくなったとしても、誰かが融通してくれるし、個人じゃ融通しきれないほどの規模であれば行政が<移動式電源>を手配してほんの数時間で復旧させてくれる。
しかも、満充電なら一ヶ月くらいもつバッテリーも、持ってない家庭を探す方が難しいくらいだし、メイトギアやレイバーギアがあれば、最悪、そこから給電すればいい。家一軒分をメイトギアのバッテリーで賄うとなるとさすがに数日しかもたないらしいが、その<数日の間>に救援が来るから問題ないだろう。
そもそも、アミダ・リアクター自体、滅多なことじゃ故障しないそうだ。何しろ放射性物質が燃料になってるから、万が一にも漏洩したらえらいことだしな。故障して給電できなくなったとしても、燃料は漏れたりしないようになってるらしい。
加えて、アミダ・リアクター搭載型の自動車の普及率も九割に達したとかいう話もあったし、それこそどこからでも電源は引っ張ってこられるんだよな。
そういうのが当たり前だったから、『大規模発電所から電気を買う』なんて感覚がそもそもピンと来ない。
シモーヌも言っていた。
「私達の頃はまだアミダ・リアクターは発明されていませんでしたが、それでも、ソーラーパネルの進化とバッテリーの進化で、『地域の電力は地域で賄う』のが普通になってましたし、<何十万世帯に電力を供給する大規模発電所>自体がもはやバックアップ的な存在でしたね。
あの頃、メインの大規模発電所と言えば、
<縮退炉発電所>
または、
<宙間放射線発電所>
でしたが」
<縮退炉発電所>はまさにコーネリアス号の主機が電気を生み出していたそれだ。
一方の、<宙間放射線発電所>というのは、まあ、乱暴に噛み砕いて言えば、ソーラーパネルにおける太陽光の代わりに放射線で発電するという装置で構成された発電所で、それなら、強い放射線があるところならどこでも二十四時間発電できる上に、強い放射線が常に満ちてる宇宙空間ともなるとそれこそ恒星から遠く離れたところでも発電できるからってことで主力だったらしい。
それ以前の原子力発電所なんて、今じゃすっかり、
『無闇に大仰なだけで使い勝手が悪い』
っていうものの代表格扱いだったりする。
しかし、一度建造してしまえば、しかも安全対策にそれほど拘らなくていい宇宙空間に、遠隔操作するロボットで管理するタイプのをともなれば、それこそ、コストもたかが知れてるクセに安定して大電力を供給できるってんで、バックアップ用としての需要は、今でもあったりするそうだけどな。
で、そこで出た<高レベルの放射性廃棄物>は、アミダ・リアクターの燃料にもなるという。
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