翔編 意思疎通

「? ?」


傷が癒えて治療カプセルから出たりょうだったが、さすがに状況が掴めなくて戸惑っていた。それでも、俺やエレクシアの顔は覚えててくれてて、あまり警戒はしていない。


一方、りょうが治療カプセルで寝ている間、アリゼとドラゼが縄張りを守ってくれた。その間に一度、他のアクシーズが縄張りに入り込んだが、スタン弾を込めた自動小銃を使い、追い払ってくれた。


と同時に、例のマンティアンについても警戒する。


しかし、痛い目に遭ったことが功を奏したのか、りょうの縄張りとその周辺では発見できなかった。


だが、油断はできない。


なので、アリゼとドラゼには、それぞれ、スタン弾を込めた自動小銃と実包を込めた自動小銃の二丁を装備させてある。人間なら混乱して間違えることもあるかもしれないが、ロボットには基本、それがない。『決まったことを決ったようにしかできない』という特性が活きる部分だ。


『マンティアン以外には実包を込めた自動小銃は使わない』


と決められれば、命令を変更しない限り使えないんだ。


そういう部分では安心してる。


なお、その間、鈴良れいらはどうしていたかと言うと、別にどうもしていなかった。どうせ子供が巣立つまで関係が戻ることはないし、巣立っても雄が帰ってこないことも珍しくないし、その時はその時でまた別の雄を見付けるだけだろう。


それがアクシーズの習性だ。


と、人間の俺としては割り切るしかない。


それに、無駄に心配してオロオロされても逆に困るしな。りょうを探しにウロウロされたりとか。


逆に危険を招く可能性もある。


だからこれでいいんだ。


そもそも、りょうだって他の雌のところに行ってたしな。


うん、そうだ。そういうことなんだ。


などと、また延々と考える。


自分でも『引きずってるなあ……』と思う。


『でも、それが俺という人間なんだから』


と自分自身に言い聞かせる。


それはさておき、りょうが回復したのはいいんだが、ここからがまた一苦労だな。


と言うのも、アリゼドラゼ村周辺のりょうの縄張りまでは、しょうの縄張りを超えて他のアクシーズの縄張りも一部横切ることになる。


そんなわけで、エレクシアに事情を説明してもらう。


あらゆる言語を解析し使いこなすことができるメイトギアは、ここに根付いた人間由来の種の言語(と言えるほど体系化はされてないらしいが)も、基本的には解析できていて、ある程度の意思疎通はできる。


これは、光莉ひかり号のAIやコーネリアス号のAIの管理下にあるアリスシリーズやドライツェンシリーズも同じなんだが、感情が昂ってたりすると聞く耳は持ってくれないことが多いので、先日の一件のような場合には通じないことがほとんどだと分かってる。


でも、今は、


「一応は納得してくださったようですので、ローバーで送り届けましょう」


エレクシアがりょうを説得してくれた。


やれやれ。これでまあ、無事に帰してやれる算段が付いたよ。


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