翔編 冷静にならねば
ここしばらく熱に浮かされたみたいに、やたらとあれこれしようとしてしまっていたが、ふと冷静になると、なんだか気恥ずかしくなってしまった。
いつかここに人間の社会ができるとしても、それはおそらく俺がいなくなってからのことだ。しかも彼らは彼らで自分の力で自分達の社会を作り上げていくだろう。地球人類がそうしてきたように、技術も科学も、自分達が努力し研鑽し生み出していくに違いない。
俺が何もかもを用意してやる必要はないんだ。
ってな。
いやはや、我ながら何をしてるんだろうな。
ただ、十数人規模の集落ということであればもしかすると数十年以内にもできる可能性はあるし、何より、元はと言えば、
なんだかいつの間にか目的がすり替わってしまっていた。
いかんいかん。冷静にならねば。
それでも、あの集落候補地をこの惑星の文明の基点にするというのも目的の一つには据えたい。
というわけで、改めて落ち着いて開発を進めたいと思う。うん、<開拓>じゃなくて<開発>だな。
「おかえりなさい。お疲れ様でした」
家に戻るとシモーヌが出迎えてくれる。<結婚>する以前からずっと変わらずにそうしてくれてたんだが、なんか、結婚してからだとまたちょっと違って見えるな。
「ありがとう」
労ってくれる彼女に感謝を覚える。だから感謝の印に軽くキスを。
「ヒュー、ヒューッ! お熱いね~♡」
ちょうど家から出てきた
「もう、
シモーヌが照れくさそうに返す。
「おかえりなさい」
「おかえり~♡」
「おか~♡}
「おかえりなさい」
ビアンカは自分の家の窓を開けて声を掛けてくれた。食事をしているところだったようだ。
ああ、あったかいなあ……
正直、俺としては今のこの状態で満足なんだが、
となるとやっぱり人は増えていくだろうしな。準備は必要なんだろう。
熱に浮かされたように急いでやる必要はなくても、こつこつとやっていくさ。
何気なくタブレットで他の家族も確認すると、
そういう意味でも満たされてるよ。
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