翔編 好み
アクシーズにとって<強さ>は非常に重要な要素だから、雄が雌に対して自身の強さをアピールすること自体は別に間違っちゃいないんだろう。
ただ、やっぱり<好み>というのはあるんだろうと思う。その雌にとってこの雄は好みじゃなかっただけだろうな。
とは言え、雄の方は納得できなかったらしく、とにかく自分の強さを分からせようとしてたようだ。
が、問題はそこじゃない。雌の好みのポイントから外れてるんだ。だからいくらアピールしても迷惑なだけだ。
なんてことを言ってる場合じゃないか。
しつこい雄に絡まれ、雌は必死で逃げた。勝てない奴を相手にすればとっとと逃げるというのも野性なら当然の判断。そして雌が逃げた先には
結果として
となると、当然、縄張りを侵された形になった
しかも
威嚇も警告もなく、
「ギャウッッ!!」
まったく予測もしていなかったところに思わぬ攻撃を受けたその雄は悲鳴を上げてバランスを崩し墜落。
完全な不意討ちだったとは言え、他のアクシーズの縄張りに入った時点で攻撃されるのは当たり前だから、
攻撃を受けた雄は樹の枝に掴まり、反撃するために体勢を整えようとした。だが、そのタイミングを与えない。
エレクシアやメイフェアやイレーネの戦い方を目の当たりにしてきた上に、
さらには、正々堂々とか卑怯とか、そんな概念自体が野生の生き物にはない。生き残ったものが勝ちなのだから。
より確実に勝利を得るために不意討ちなどの工夫をするのはむしろ当然の選択だな。そもそも生きるうえでの道理が違う人間の世界でそれを真似るから<卑怯>だなんだという話になるだけで。
いずれにせよ、自らが生きるための努力として、
すると相手の雄も、人間ほどはプライドなど持ち合わせてないこともあり、少なくないダメージを負ったことで、いわば<損切り>した形を取る。さらに攻撃を加えようとする
ここで無理をするよりも、他にも雌はいるんだから、そちらに目を向けた方がいいに決まっている。
こうして
あくまで『結果として』だが。
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