走・凱編 大勢

そう達だって、ただ守られてるだけじゃない。


「があっ!!」


自分達の獲物を横取りしようとする他のレオンを迎え撃つ。


正直、しっかりと食べられているそう達と、獲物不足で十分に食べられていないレオンとでは見た目にも歴然とした差があった。普通に戦ったら向こうに勝ち目はないだろう。


だが、向こうは向こうで、生きるために必死だ。となれば当然、文字通り死ぬ気でかかってくる。


その気配を察したんだろう。そうは、雌達に任せるんじゃなく、積極的に前に出た。ボスとして、群れを守るために。


向こうも、おそらくボスらしき雄が前に出てくる。


しゃくそうの前に出て自分が迎え撃とうとすると、


「ぐあっ!!」


そうが一喝。


『邪魔するな!!』


と言ったようだ。これはボスとしての自分の役目ということなんだろう。しゃくはビクッと体を竦ませて下がった。普段は穏やかにも見えるそうだが、さすがに群れのボスとしての威厳は備えているな。


そして、向こうのボスらしき雄と交錯する。


「がああっっ!!」


「ぎゃうあっっ!!」


そうの気迫も凄まじかったが、相手も追い詰められていて後がなく、さすがの気迫だ。


こうしてそうのグループと侵入してきたレオンの群れとの戦いが始まってしまった。


そうっ!!」


そこに、ビアンカも駆けつける。しかし、既に混戦状態になっていたことで、銃は使えない。するとビアンカは躊躇うことなく自動小銃の弾倉を抜き取って銃本体に入った弾丸も空に抜けて撃った上で放り出し、徒手で突入した。このタイプの自動小銃は銃声も元々それほど大きくなく、しかも開けたところで撃つとそれこそ『タン』と割と気の抜けたような音しかしないので、銃を知らない相手には威嚇の効果もほぼない。


それよりは、ビアンカ自身の姿こそが威嚇になる。


体高約三メートル、体重二百キロの巨体が時速数十キロで突進してくれば、それはもう自動車が突っ込んできたような迫力だろう。


異様な乱入者に、そう以外のレオン達がビクッと体を竦ませる。


ローバーにも乗ったことがあって、俺の<群れ>でいろんな種と一緒に暮らしていた経験のあるそうはともかく、他のレオンにとっては恐ろしい存在に違いない。


そうと最も仲がよく頭もよくさまざまなことを聡く理解しているらしいけいでさえ腰が引けている。


だが、ビアンカの登場にそうが怯まなかったことで、大勢が決したようだ。


相手のボスが、一瞬、ビアンカに気を取られたことで、そうの牙がそいつの首筋を捉えた。


「ぎゃああーっっ!!」


魂さえ握り潰すかのような悲鳴が空気を叩く。


それでも何とかそうの牙を外そうと必死に相手はもがいた。生きることを決して諦めない、<命の力>がそこにはあったのだった。


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