走・凱編 効率化
新暦〇〇二九年六月十九日。
俺だって決して完全無欠な立派な人間じゃない。失敗もするしくだらない理由で寝坊したりもした。
だからこそ、そんな自分の所為で自分に不利益が降りかかるのなら、それは<自業自得>として甘んじて受け入れなきゃいけないんだろうなと考えるんだ。
ただしここで注意しなきゃいけないのは、だからって他人に対して、
『自業自得だ!!』
と面と向かって言うのは、それはそれで好ましくないってことだよ。
面と向かってそんなことを言われたらついつい反発してしまうのも人間ってものだ。そうやって無駄に反発を生むのは決して合理的じゃない。
そういう意味で、俺は、
自分が反省してるのを受け止めてもらえるなら、ちゃんと認めてもらえるなら、自分の過ちを認めて反省するのは怖くないんじゃないかな。
せっかく反省しているところに追い討ちをかけるようなことをされたら、そりゃ反発だってしたくなるのが人間ってものだろうし。
そんなわけで、俺は、自分で反省してる人間には『反省しろ!』とは言わないでおこうと思う。ましてや罵ったりしたくない。
そんなことをしてる俺の姿を、子供達に見せたくない。真似をさせたくない。
と、また話が逸れたな。
なんで<ビアンカ専用ローバー>と<アリスシリーズ開発に向けた試験機>の検証の話がこうなるんだ?
まったく、俺の悪い癖だ。
ただ、そうやって様々なことに絡めて考察するからこそ今の俺があるというのも事実なんだし、あまり悪いように考えるのも違うんだろうな。
で、話を戻して、<ビアンカ専用ローバー>と<アリスシリーズ開発に向けた試験機>のテストを見守る。
しばらく走ったところで停車させ、AIがデータの整理をする時間を与える。これによって効率化が捗るそうだ。
五分ほど待つと、またゆっくりと走り出す。そうして徐々にスピードを上げ、時速三十キロに至る。すると今度は、問題なく走れた。それを確認してさらにスピードを上げると、またよろよろと蛇行し始める。
舗装されていないただの原野である路面からのキックバックの処理が追いつかず、ラグが発生してるんだ。ゆえに人間が自動車を運転している時に無意識に微妙にハンドルを動かしてカウンターを当てている動作のタイミングが合わずに、車体のブレが大きくなる。
この辺りの制御については、ローバーのAIに任せてしまえばスムーズに走れるものの、それじゃ<アリスシリーズ開発に向けた試験機>のテストにならない。なので敢えて試験機の方に制御を任せているんだ。
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