走・凱編 警戒度
新暦〇〇二九年六月十六日。
翌週、今度はイレーネとセシリアがメンテナンスを受けるためにコーネリアス号へと向かうことになり、
「どう? ビアンカも行く?」
シモーヌに訊かれて、
「はい!」
彼女は二つ返事で応えてた。
いつもならイレーネとセシリアだけで行くところを、今回はシモーヌも念のために同行する。ビアンカもその方が安心するだろうから。
自分の<席>が設けられたローバーに乗り込み、ビアンカとシモーヌとイレーネとセシリアがコーネリアス号に向けて出発。俺は四人を見送った。
道中、特に問題もなく四時間ほどで到着。イレーネとセシリアは交代でメンテナンスを受け、シモーヌはプラントで栽培された野菜を収穫。ビアンカはモニターで
今日も子供達は一緒に遊んでる。その可愛らしい姿にビアンカはメロメロだ。
なので今回はモニター越しだけじゃなく、彼女にとってはやや窮屈ながら通路に出てコーネリアス号の<窓>からも子供達の様子を見たそうだ。
長い航海でも窮屈にならないようにとそれなりに余裕を持たせて作られたているはずの通路だが、それはあくまで地球人類を想定したものだから、ビアンカの場合だとかなり身を屈めて、腹を擦るようにして潜り込む形になったらしい。
それでも彼女は肉眼で見られて嬉しかったんだとか。
たぶん、彼女の身体能力なら、生身で
しかも、イレーネがいたとはいえ
人間の中には、たまに、その辺りの距離感を無視してぐいぐい野生の動物に近付いていって事故に遭うのがいるからな。専門家とかが近付けたりするのは生態をよく分かった上で大丈夫な近付き方をしてるんだろうし、その専門家でさえ不幸にも事故になることがあるんだ。
素人が野生の動物の一面だけを見て『可愛い♡』とか言って近付くのは自殺行為だし、野生に動物の側にとっても迷惑な話だろうな。
ビアンカはその点、惑星探査の任を帯びた<専門家>なわけだから、まあ、その辺をわきまえてくれてると思う。記憶は失われてても。
しかし万が一のことも考えて、イレーネにはその辺りを用心してもらうようにしてる。
でも幸い、そんなこともなく無事にメンテナンスを終えて、帰路に就くことになった。
そして、コーネリアス号のカーゴスペースから出ると、日が傾いてそろそろ活動の時間に入る
さすがにまだ警戒はされてるものの、少なくとも前にも見た顔だというのは分かってくれていたようで、警戒度は下がっている印象があったのだった。
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