走・凱編 性分化疾患

ところで余談ではあるが、実はこれまで敢えて触れずにきたのだが、あんは性別がいまだにはっきりしていない。


現在は外見上の特徴としては雄だとみられてるものの、確定はしてないんだ。本来なら第二次性徴が始まっているはずなのにそれが見られず、雄にしては明らかに体が小さい。


「性分化疾患の可能性がありますね」


とは、シモーヌの見解。エレクシア達メイトギアも同様の見解を示してる。なので近々、光莉ひかり号の分析器で詳しく調べようと思ってる。


ただ、それが分かったところで人間社会のように治療もできないので、成り行きに任せるしか方法がない。


現時点で推測されている一番の懸念材料としては、


『子孫が残せない可能性が高い』


ということだが、これもなんだかんだと子孫を残せない事例はそれほど珍しくないので、まあ、それはそれで摂理というものなんだろう。


人間は遺伝子疾患とかとなるとついつい深刻に捉えがちだが、野生の生物にもそういうのは普通に発生しているので、もうそれ自体が自然なんだろうなと俺は思ってる。


俺の妹に、光莉ひかりに起こったことに比べればそれこそ<普通>なんだろう。


光莉ひかりに起こったことは、少なくとも俺がこの惑星に不時着する頃までははっきりした原因も解明されてない難病だった。一説によるとどこかの惑星のウイルスに感染したことによって起こる遺伝子疾患だと言われているものの、確認はされていない。


ただ、明らかに人類が地球にいた頃には見られなかった疾患だそうなので、未知のウイルスに感染したことによる遺伝子疾患だという説も否定はされていないとも言う。


まあ、そんなのに比べれば、な。


これも、あんがそういう風に生まれついてしまっただけだ。誰が悪いわけでもない。人間がよくやる『誰が悪い』という犯人探しにも意味がない。少なくともあん自身に責任はない。本人の努力とかなんとかはまったく関係がない。


俺は、どういう風に生まれついてもそのままを受け入れるよ。


ビアンカについてもそうだ。


なので、この話は今後もたまに触れるかどうかなって程度のことで。


それに、あん自身はとても元気だしいい子だ。母親に危険が迫ったら助けようともしてくれる。弟妹達とも仲がいいし、そうかいの子供達とも仲がいい。俺としてはそれで申し分ない。


しばらく遊んだら、疲れたのか子供達は重なるようにして眠ってしまってた。大人から見るとよくそんな格好で寝られるなって思ってしまうような寝相だ。でもこれも子供にはよくあるやつだな。


かと思うと、下になってたひょうが、


『邪魔だ!』


と言わんばかりに自分の足の上で寝ていたろうを蹴り飛ばす。するとろうは、


『何事!?』


とばかりに周囲を見回したものの特に何もないので、またすぐに眠ってしまった。


いやあ、実に可愛いなあ。


これはビアンカでなくても笑顔になってしまうよな。


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