走・凱編 普通じゃない

なお、おんにはくんという息子がいるが、この日、おんくんと一緒に出掛けてしまって、狩りには参加していない。


どこに行っていたかと言うと、かい達が狩りに行っているのとは別の畑だった。そこに花が沢山咲いていたので、それを見に行ったらしい。


で、レオンが現れたことでその畑の周囲にいた草食動物達は逃げてしまい、そのことによって、かいそうりん達が狩りに向かった畑に獲物が集まるという形で、実は役に立っていた。


今回、りんが仕留めた獲物も、草食動物達がおんに気付いて他の畑に移動。餌の取り合いになったことで追いやられ、群れから離れていたようだ。


それがあるので、かいも、おんの好きなようにやらせているようだな。おんが向かった畑とは別の場所を狙えばそれだけ獲物が豊富にいるということで。


ちなみに、レオンが現れたからと言ってすべての動物が逃げてしまうわけじゃなく、その中で小型の動物が残っていたりすると、くんはレオンの本能に従って襲い掛かった。と言うか遊んでた。


どうやらくんは、母親に似ず普通にレオンとしての習性が強く出ているらしい。


おんも、自分が花が好きだからといってそれを息子にまで押し付けようとはしない。好きにやらせてるんだ。なので、くんは他の子供達とも普通に仲が良くて、じゃれ合ってる。そうすることで普段から狩りの練習もしてるということだ。上手くできていると思うよ。


『普通じゃない』


ことも、それはそれで何かの役に立つ場合もある。人間はとかく『普通じゃない』ことを嫌うが、実は野生ではそれも生き延びる為の戦略の一つになっているのかもしれない。すべての個体が決まりきったことしかしないとなると、それが上手くいかない状況に陥るともうどうにもならなくなるからな。


かいは、いや、かいだけじゃなくそうりんもだが、その辺りのことを分かっているのかもしれない。だから『普通じゃない』ことをあまり忌避しない。


もっともそれは、本人達がそもそも俺の子で、普通じゃない環境で育ってきたからというのもあるんだろうが。


とにかく、それぞれをうまく活かしてしっかりと生き延びていってほしいと思う。


ここにできるかもしれない人間社会よりも先にしっかりと彼ら彼女らの社会が出来上がってるんだ。それは尊重したい。


もちろん、仲良しこよしではいられないのも事実だろう。でも、そこに存在するすべてが仲良しこよしだなんて、そんな世界が存在するとも思えない。現に、おんのことは、せん辺りはあまり快く思っていないみたいだしな。


そうやって<合わない相手>というのもいるのが当然なんだ。必ずしもいい気分でなくても、だからと言って自分達に合わせてくれることばかりを願ってても、それは相手も本音は同じだろう。


この世というのは本質的にそういうものなんだ。


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