走・凱編 釈

話があっちこっちに飛ぶのは俺の癖なので申し訳ないがご容赦願いたい。


ビアンカ達が帰路にある間、そう達の話に戻そう。取り敢えず次は、そうの二人目のパートナーであるしゃくについてかな。


彼女は、先にも言ったようにけいに比べると攻撃的な一面もあってか、せんと一緒によくかいをイジメてた。ただその理由としては、これも先に言った通り、そうのことが好きだったらしく、いつも一緒にいるかいのことが邪魔だったという<ヤキモチ>の面が強そうだ。


なので実はけいに対しても強く当たることもあった。そうけいの毛繕いをしてると、けいに対していきなり飛び蹴りを食らわすということもあったんだ。


反面、そうに対してはあまり強く出ることはなく、それどころか、けいがしてもらってるように毛繕いしてもらおうとしてか、体を寄せてくることもあった。これは、前のボスが生きていた頃からそうだった。


その態度があまりにもあからさますぎてむしろ微笑ましいとさえ思ったよ。


彼女としては懸命にそうにアピールしてるのに振り向いてもらえなくて、少し同情的な気持ちにもなったな。


ただ、かいに対してはあいつが雄で、『弱い雄は要らない』という雌の本能のなせる業か、当りは決して弱くなかった。けいに対するそれはある程度の手加減も感じるものの、かいに対しては容赦はなかった。


もっとも、当時から体格的にはかいの方が二回り以上大きくしかも体幹が強いので、かいの方は何もしていないのに、子供が丸太にでも飛び蹴りしたかのように弾き返されて転がったりもしていたな。


すると慌てて体を起こして、


『今日のところはこれで勘弁してやる!』


とでも言いたかったのか、


「ガウッ!!」


と牙を剥いて一声発して草の影に隠れてしまったりということも。


それがまた正直可愛くて♡


だから俺としてはしゃくのことは嫌いじゃない。割と可愛いヤツだと思ってる。


不器用なんだよ。やり方が。


その後、そうの助力もあってかいせんを屈服させると、さすがにちょっかいをかけることもなくなった。ただし、けいに対してはヤキモチもあってかそれからもちょくちょく突っかかっていったりもしてたな。


でも、けいの次とはいえそうのパートナーになれてからは気分的にも落ち着いたようだ。


ただし攻撃的な面がなくなったわけじゃなく、それは狩りの時に存分に発揮される。


獲物に対して襲い掛かる時の様子はまったくもって半端じゃない。恐ろしい形相で容赦なく首筋に食らいつき、頸椎を噛み砕く。彼女達が<猛獣>だというのを思い知らされる瞬間だ。


それでも、俺にとっては<可愛い息子の嫁>である。大切な家族の一人だ。もちろん守りたい。


そういう意味からも、<草食動物をおびき寄せるための罠>として作った畑の様子を、ドーベルマンDK-aをベースにした、アリスシリーズのボディの試作機を通じて見たのだった。


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