走・凱編 まかり通る

『ビアンカを俺達と敵対させないように』


俺達の方がまず彼女を受け入れるというのは、そういう意味でもあるんだ。こちらから敵対するようなことをすると彼女としても自分を守るためには敵対するしかなくなるだろう。


本来は敵じゃなかった相手をわざわざ敵に回すというのは、人間にとっては大きなリスクなんだろうな。


まあ、人間社会じゃビアンカは、


『人間として認められない』


という大きな問題はあるものの、ここじゃそれも大した問題じゃない。今いる俺達の受け止め方だけって話だ。


ビアンカも、この惑星においては、


<人間の種族の一つ>


なんだよ。


今後、社会を作り上げていくのなら、いずれはその辺りも厳密に規定していく必要があるだろうが、今の時点では、


『俺がこの世界の法だ!』


で通るからな。それがまかり通るうちに、ビアンカのような事例についても明確にしておきたい。


俺がそんなことを考えてる間も、ビアンカはそう達の様子をモニターで見ていた。シモーヌによると、ビアンカはネコが好きらしい。それもあって、猫科の動物を思わせるレオンに惹かれるのかもしれない。


それで言うともちろんしんさいもそうなんだが、しんさいもビアンカを警戒してあまり姿を見せなかったからな。どうやらあまり危険はないと判断してからも、野生の本能がそうさせるのか、積極的には顔を合わさなかったし、ビアンカの姿を見たらさっと身を隠してしまったし。


これはあれだ。ネコを飼ってる知人の家に行った時なんかに、そこのネコが姿を隠してしまうあれと同じかもしれない。何度も訪れて危険はないと分かってくれてるだろうにやっぱり距離は保とうとするからな。


もっとも、それはえいも同じか。


レオンよりはかなり好奇心の強い傾向のあるパパニアンであるあらたは、距離は保とうとするが興味もあるのかよく屋根の上から見ていたりするし、あらたが一緒なら大丈夫になりつつあるらしいうららも同じようにして見てる。ただ、ほむらはそもそもビアンカに興味がないらしく、と言うかさいといちゃつくのに忙しいのか関心を示さないが。


まあ俺達の縄張りの中ではそんな状態な訳だが、ここではモニター越しなので、そう達はすごくリラックスした姿を見せてくれていた。


それが気に入ったんだろうな、ビアンカはずっと眺めていたそうだ。


穏やかな表情で。


同じ映像を俺のタブレットの方にも映してもらったが、そこでは、そうの二人目のパートナーであるしゃくとの子供達のひょうらんが、寝ているそうにまとわりついていた。


なるほどこれは可愛い。うっとりと見入ってしまうくらいには可愛いと俺も思う。


かと思うと、かいの一人目のパートナーせんとの子であるえんに、四人目のパートナーほんの子であるこんがまとわりついていたりもする。


えんはもう、いつ巣立ってもおかしくないくらいに成長して、弟妹達の<良きお兄ちゃん>になっていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る