走・凱編 AIの認識
コーネリアス号のAIは、今のビアンカを人間として認識できなかった。なので、事前に事情は告げてはいたものの、彼女を<ビアンカ・ラッセ>として迎えなかった。
もっともそれは、シモーヌの時もそうだったけどな。
<本来の
以前にも言ったと思うが、<クローン人間>には人間としての人権はない。保護はされるものの、それは人間以外の希少な生物を手厚く保護するのと同じ扱いであって人間として遇するわけじゃない。当然、選挙権もない。
ただ、以前にも触れたと思うが、いくら人間のクローンが禁止されていて、もしそれを作ったことが発覚したら懲役数百年レベルの重罪であっても、やはり数年に一件程度の割合でクローン人間の誕生が確認されるので、その都度、数年間の保護観察の後に司法判断による特例としての裁定が下れば新生児と同じ形で出生届けが出され、普通の人間と同じように義務教育(事情が事情なので多くが通信教育や、特別な保護施設内での教育カリキュラムという形ではあるが)を受けて、そして晴れて<人間>として生きることができるようになるそうだ。
とは言え、シモーヌやビアンカのような、人間としては有り得ない身体的特徴を有した事例については公式に確認されておらず前例もないので、AIとしても彼女達を人間として扱うことはできないんだよな。
なお、<人間としては有り得ない身体的特徴を有した事例>という意味では、都市伝説的に、
『これまでにも何度かそういう事例があったものの、全て闇から闇に葬られてることで公になっていない』
なんてことがまことしやかに噂されていたりはするけどな。
まあそれについては事実かどうか確認もできないことだから、AIは考慮にもいれないが。
何にせよ、そんなこんなで、シモーヌについては、
<秋嶋シモーヌの遺伝情報を何らかの方法で取得し再現した、この惑星の生物>
という認識ではある。
その認識自体は何も間違ってなくまさにその通りなのでとやかく言っても仕方ないし、メイフェアやセシリアやイレーネが彼女を<仲間>と認識してるので、これといって大きな問題はなかったんだ。
ちょうど、<保護観察中のクローン>に準じた扱いという感じかな。
AIは融通は利かないが、半面、人間のような、
<生理的嫌悪感に基いた忌避>
というものとも無縁なので、そういう点では心配してない。
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