走・凱編 慣れ
で、足を伸ばせば高さ三メートル以上まで手が届き、力も確実に人間のそれを大きく超えるビアンカは、まるで小型のクレーンのような働きをしてみせた。
「そんなに気を遣わなくていいんですよ」
そう声を掛けるシモーヌに、ビアンカは、
「いえ、体を動かしていた方が気が紛れますから」
やや苦笑いのような表情を浮かべつつ応える。
確かに、自分が何者か分からない、しかも怪物のような姿をしてるとなれば、精神的に非常に不安だろう。体を動かしている方が気が紛れるというのも分かる気がする。
そうしてビアンカは、エレクシアやイレーネと一緒に自分が住むことになる家を作り上げていった。
新暦〇〇二九年六月六日。
で、十日を掛けてようやくビアンカの家が完成する。
「どうですか? 何か気になる点があればすぐに手直しさせていただきます」
エレクシアが問い掛けるものの、ビアンカは、
「いえ、大丈夫だと思います。狭さも感じませんし、何よりちゃんと囲まれてるだけでもありがたいですし」
自分の体を晒していたくなかった彼女にとってはそれが一番の望みだったんだろう。
それに比べると、ビアンカの場合は、自身の存在そのものが大きな懸念材料だろう。
コーネリアス号乗員、ビアンカ・ラッセとしての記憶が戻った時、どう反応するか……
それまでの間に、可能な限り彼女には今の自分こそを自然なものとして受け止められるようになってほしい。
そしていつか、
『生まれてきて良かった』
と思えるようになってほしい。
俺達は、もうすでに彼女のことを受け入れてる。
だが、少なくとも俺もシモーヌも
しかももうここまでで
そんな
とは言え、すでに成体で成長しきってる
また、レッド達は、警戒はしながらも庭に戻ってきている。で、ビアンカにも、
「彼女達は、私達の<隣人>。飼い犬とまでは言わないけど、敵対はしてないから安心して」
シモーヌがそう説明してくれていたのだった。
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