明編 不定形生物由来の個体
雷雨が過ぎて三十分ほど経ち、ようやく緊張が解けてきた頃、エレクシアが言った。
「マスター。河のこちら側に、
「なに?」
以前、同じように対岸の地域には生息していながら河を恐れてかこちら側にはいなかった
今回も何らかの事情でこちら側に流されてきたか何かかと思ったものの、
「どうやら、例の不定形生物由来の個体のようですね」
とエレクシアが付け足す。
「なに…!?」
その言葉に俺は思わず身構えた。そしてタブレットでドローンの映像を確認する。
「これは…確かに
画面には、体が透明になっているようにも見える
と、俺が見ていたタブレットを覗き込んだシモーヌが、
「ビアンカ……!?」
驚いたように声を上げる。
「え?」
突然のことに戸惑う俺に向かって、
「この
絞り出すようにしてそう言った。
ああ、なるほど。不定形生物の中に情報として保存されているコーネリアス号の乗員のDNAを基に構成された姿ということか。
しかし今回は少し様子がおかしい。
人間部分が、自分の体を隠そうとするかのように、腕で胸と下腹部を覆っている。
と、そこで俺とシモーヌは顔を見合わせて、
「まさか……!?」
揃って声を上げてしまった。同時に同じ考えが頭をよぎったんだ。
「<
そう。<人間に似た部分を持っているだけの獣>ではなく、<獣の姿をした人間>ということだ。人間部分に、シモーヌと同じように人間としての感覚がある可能性が高い。
「エレクシア! 出るぞ! この<ビアンカ>を保護する…!」
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