明編 魅力的な雄

新暦〇〇二九年四月二十日。




現在、俺が一人身を貫いている、と言うか一人身でいられてるのは、他の種族とはなるべく距離を取って不干渉の立場をとってるからだと思う。ひそかじんふくようの事例でも分かる通り、非常に強力な攻撃手段を持ち、かつこの台地ではおそらく無敵の存在であるエレクシアを従えている俺は、実はかなり<魅力的な雄>なんだろう。


まあそうだよな。俺と一緒に暮らすことで非常に高度な<安全>を得られるし、餌の心配も要らなくなるし、子供を育てるにはこれ以上ない環境が手に入るわけで。


問題は、彼女らからしたら<畸形>とも言えるこの見た目をどう捉えるかということだが、それこそ人間とは似ても似つかない動物が人間相手に恋をしたりって事例もあると聞くし、中にはそういう個体もいるというわけか。


パパニアンのうららあらたが好きで、クロコディアのはるかやその娘のきたるが俺に惹かれなかったところを見ると、必ずしも惚れられるわけじゃないしな。


しかしその一方で、ひそかひかりを、ようあかりを我が子として認識できなかったりして、人間らしい外見というのが彼女らにとってまったく問題ないというわけでもないんだろう。やっぱりそれなりにハードルは高いと思われる。


だが同時に、じゅんがパパニアンとして生き延びられたことを考えると、例外というものはいつでもどこでも存在しうるとも言えるんだろうな。


ひそかじんふくように俺がパートナーとして認められたのも結局はその<例外>ということなんだろうし。


となれば、あまり関わらないようにするだけで、一方的に見染められてしまう可能性はぐっと減るわけだ。


正直、俺自身の子供はもういいかな。何しろ、ほまれひかりほむらあらためいじょうそうかいしんさいりんしょうあかりすいの十四人だぞ? 冷静に考えたら十四人の子持ちって、さすがに多いよ。


実際、健康寿命が二百年を超えて、<結婚適齢期>と呼ばれる期間が百五十年以上あって、女性が問題なく妊娠出産できる期間も同じくらいあってっていう今の人間社会でも、十四人というのはなかなかいない。


とは言え、多い人はもっと多かったりするそうだけどな。本当かどうかは知らないが、ある資産家に至っては、実の子供が百人以上いるとも聞いたことがある。しかも認知した人数だけでそれだから、認知してないのを含めるとさらに増えるらしいんだとか。


なんて言うか、遺産の配分を巡って何が起こるか考えるだけで怖いな。子供だけじゃなく、その子供達の母親もあれこれ主張してきそうだし。


その点、俺の子供達は相続する資産自体ないから平和なものだ。


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