明編 人生の先達
『なぜ人間を殺してはいけないか?』
それはたぶん、俺がその場その場で丁寧に答えるようにしてきたからだと思う。子供がしつこく質問攻めにするのは、結局、親の側がその都度丁寧に答えていないからだって感じるんだ。
加えて、あの子達にとって<死>は、当たり前にそこにあるものだからというのも影響してるのかもしれない。その上で、
『生きるために戦う』
のが当然なので、これは裏を返すと、
『生死に関わらないようなことでは相手を攻撃する必要はない』
という解釈になっている気がする。
『人間を殺していいかどうか?』
以前に、
『生死に関わるようなことでもないなら戦う必要がない。殺す必要がない』
ということなのかもしれない。
それと同時に、
『何かに疑問を抱く』
というのは非常に高度な思考を行っているという証拠でもある気がする。
だから俺は、子供の問い掛けを蔑ろにしたくない。
これから、
もしそうなった時に、俺はそれときちんと向き合いたいんだ。頭ごなしに怒鳴りつけて威圧して従わせようとするんじゃなく、仮にも人生の先達として、それなりに経験を積んできた者として、<答>を提示していきたいんだよ。
じゃなきゃ、今まで無為に過ごしてきたのか?ってことになると思うし。
俺は、いろいろと考え込んでしまうタイプの人間だ。
だが、同時に、だからって動くべき時に動けないというんじゃ意味がないとも思ってる。
故に、
でも、そうやって駆除した後も、その判断が本当にそうするしかなかったのかどうかっていうのは、検証していきたいんだ。それをしなきゃ、ただの<独善>になってしまうと俺は感じてる。
独善によって強引に物事を推し進めようとしたことで大変な被害が出たということも、過去には無数にあったのが分かってる。
だったら、その<先例>から学んで活かしていくのは、何もおかしなことじゃないだろう?
その一方で、独善的に強引に対応したことで被害が抑えられた事例というのも確かにあったんだろう。
で、結果としてそれが英断だったのかそれとも暴挙だったのかは、結局、後から振り返って検証したからこそ分かったんじゃないのか?
それを忘れたくないんだ。
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