明編 丈

新暦〇〇二八年十月十四日。




ここまでめいのことばかり触れてきたが、もちろんじょうのことも忘れてるわけじゃない。


ただ、めいの日常に触れると、じょうの日常も分かってしまうんだ。


正直、固有名詞を入れ替えるだけでほとんど間に合ってしまうという。


だから何か特別なことが起こらないと触れる必要もないと言うか。


ああでも、じょうめいよりもさらにちゃっかりしてる面はあるのかもしれない。


なにしろ、エレクシアが撃退し、かつドーベルマンDK-aを哨戒に当たらせることでできた縄張りの空白地帯を、さらっと自分の縄張りしたんだしな。


めいの場合は、かくの縄張りに入り込んで闘って自分の強さを認めさせたことで居着いたっていう経緯がある。


当時はまだかくも若かったから今よりは未熟で、ちょうどあの頃のめいと互角だったんだよな。


……ドローンの援護もあってではあるが。


まあそれはそれとして、じょうも自分の縄張りを守り通してるんだから、もちろん強いんだ。むしろ、めい以上にエレクシア達の戦いぶりを見てきてるかもしれない。そこから学んで技を身に付けた。


かつ、ドローンやドーベルマンDK-aの援護を積極的に取り入れている様子さえ見える。身体的な強さもさることながら、要領がいいと言うか、頭がいいんだろう。


無論それも、元々の強さがあってのことだが。


ただ、要領よく退けてしまうことから、せっかく雌が現れても早々に追い返してしまって、まだちゃんとパートナーが見付けられずにいるようだ。何度かそれらしいのが現れたものの、じょうが撃退してしまっていつの間にかいなくなる。


マンティアンの関係は、


『自分のことは自分でする』


『自分の身は自分で守る』


だから、いくらじょうが優しくても、強さのバランスが取れないことで上手くいかないんだろうな。


いやはや、難しい。




なんてことを思ってたら、この数日後、じょうのそばにまた新しいマンティアンの雌の姿があった。


正直、今回も上手くいくかどうかは分からないが、取り敢えず見守るしかないだろう。


しかし、今度の雌はかなり強そうだ。なにしろ、じょうが押され気味だったんだからな。たぶん、単純な力だけなら向こうの方が強かったと思われる。それをじょうが技で補った感じだった。しかも気も強そうだし。


あいつもマンティアンとして考えればもういい年、いや、外見では年齢が分かりにくい面もあるマンティアンだからあれなだけで、はっきり言って<中年のおっさん>だ。さすがにパートナーが見付かってくれればと思う。


とは言え、さくの件もあったことだし、名前を付けたりするのは上手くいってからにした方がいいかなとも思ってしまったりもしたのだった。


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