閑話休題 「親子あるある」

新暦〇〇二八年八月二十六日。




がくについては、倒すしかなかったとはいえ、落ち着いてくるとやはり申し訳ない気持ちにはなってしまう。


あいつがもし、<きょうの生まれ変わり>だったとしたら、余計にな。


だが、後悔はしていない。後悔したところでなかったことになる訳でもないし。


なんて、こうやってあれこれ考えてしまうのは俺が俺である限り、なくなることはないと思う。


それでも、弔うことくらいはしてやっても罰は当たらないだろう。


そこで、俺は、がくが倒された場所に、あいつの墓を作ることにした。


と言っても、今はまだ、あいつの亡骸を貪る獣達の宴の場と化しているから、それが落ち着いてからということになる。


ドローンのカメラには、数日が経過してもボクサー竜ボクサーをはじめとした、中型・小型の肉食獣が無数に群がり、思うままに食らっていく様が映し出されていた。


あれほどエレクシア達の攻撃を防いでいた<鱗の鎧>も、口から中に入り込んで内側から食い破ったものがいたんだろう。ところどころに穴が開き、そこからも侵入されて中を食われていったようだ。


どんなに人間視点で綺麗事を並べようと、自然とはこういうものだ。死ねばただの<肉>。そしてその肉は他の生き物達の命を繋ぐ糧となる。


しかしこの調子だと、食い尽くされるのにさらに数日くらいはかかりそうだな。


その間は、ここらの肉食獣も食べ物には困らないか。


しかも、がくの肉を食うために集まる動物達は、生きて動いている獲物しか食べないマンティアンの格好の餌となる。


実に上手くできてるよ。




ところで、マンティアンと言えば、あの時、めいじょうが随分とタイミングよく駆けつけた気がしてたが、それも、何のことはない、ほまれが大声で、


「お父さんを助けるぞ!」


と叫んでたのを聞きつけて駆けつけたというのが流れのようだ。


叫びながら樹上を移動するほまれに気付いためいが、後を追うように移動を始めるのが、彼女を見守るために配置していたドローンのカメラに捉えられていたんだ。


そしてそれは、じょうしょうすいも同じだった。


一緒に暮らしてたことで、どうやら、<家族の間でだけ通じる言葉>みたいなものもできていたらしい。


それもがくにとっては不運だったんだろうな。


そして、子供達を守ってやりたいと思ってた俺が、いつの間にか子供達から『助けたい』と思われてた。


これも<親子あるある>かもしれないなあ。




そんなこんなで、ほまれ達についての話はいったん終わって、これから後は、めいについて触れていくことにしようか。


マンティアンはハーレムは作らないが、俺のハーレムの出身者ということでひとつ。


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