誉編 言い逃れ
新暦〇〇二七年六月二十日。
生まれがどうとかは決定的な要因じゃないことはこれまで何人もの、俺の子供達もそれ以外の子供達も見てきて確認してきた。
少なからず影響することは事実でも、それだけで決まるわけじゃないのも事実だ。
それに、
その一方で、これまでにも何度か触れたと思うが、俺は、<生まれつきの性格>というものに対しては懐疑的だ。と言うのも、人間社会にいた頃に、明らかに親の接し方が適切じゃなかったから子供が歪んだであろう事例でも、その親が、
『生まれつきの性格だから(自分達には責任はない)』
と言い逃れてきた例を何度も見た。
もっとも、当時は俺も、
『そういうのもあるのか…』
程度にしか思ってなかったが。
しかし、自分が親になった今なら分かる。それは、自分の不手際を誤魔化したい親や周囲の大人の<責任転嫁>なんだってことがね。
<生まれつきの性格>っていうものがあるんだとしても、それはあくまで、
『何となく活発だとか大人しいとか、大まかな傾向がみられる』
という程度のものでしかないと思うんだ。
実際、<生まれつきの性格>なるものが人格や性格のすべてを決めてしまうなんてことは医学的科学的にいまだに立証はされてない。
たまにそれっぽい説が発表されると、
『それみたことか!』
的に飛びついて持ち上げる人間もいたりするが、所詮は<トンデモ説>の一種でしかないままに埋もれていくんだ。
そもそも、動物実験のレベルじゃそれっぽい結果が出るとしても、そのことがそのまま人間に当てはまるわけじゃない。人間の場合は後天的な学習や経験が当人の人格形成に大きく影響することは、医療用ナノマシンの発達に伴い脳の変化をリアルタイムに観測できるようになったことで医学的科学的に既に立証されている。
もっとも、それよりずっと以前から、AIの発達に伴うシミュレーションでも同様の結果が得られてたらしいが。
俺も、実際に子供を育ててみてそのことが実感できたよ。
おとなしい性格の子が必ずしも陰にこもって不穏なことを考えるようになる訳でも、活発でヤンチャな子が暴力的になる訳でもないっていうのをな。
マンティアンが生まれつきハンターとしての形質を備えているのは、これはあくまで<種族的な形質>であって、<性格>の問題じゃない。
それで言えば、俺の子である
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