誉編 天敵

新暦〇〇二七年六月六日。




メイフェアは一応、<成人女性>をモデルに作られているので、基本的には大人の女性的な振る舞いをするようには作られているはずなんだが、感情(のようなもの)を装備している影響か、時折、子供っぽい仕草を見せることもある。


昔の俺ならその辺りを『あざとい』と感じて毛嫌いしていたかもしれないものの、今ではメイトギアが人間っぽく振る舞うことについても気にならなくなってきたな。


むしろ、昔はどうしてあんなに癇に障ってたのか分からなくなってきている。


まあそれだけ、精神的に余裕がなかったんだろうが。


で、それはさて置いて、今日も今日とてとどろきほまれに突っかかっていって退けられた後、若い雄を率いていつもの縄張りの見回りに出た。


力自慢で積極的なとどろきが小集団のリーダーなのは言うまでもないだろう。


いつも通りの順路で縄張り内に異常がないか確認し、問題ないことを確かめていったとどろき達だったが、そんな彼らを窺う存在を、ドローンのカメラが捉えていた。


「あ…ヤバいな」


危険を知らせるアラームが鳴り響いたことで俺が映像をチェックすると、そこには青みがかった緑色の、やや硬質な印象のある体を持った者の姿があった。


マンティアンだ。しかも、


かくか」


そう。マンティアンであるじんの娘のめいのパートナーのかくだった。


俺の<嫁>だったじんの子であるめいじょうは、パパニアンであるほまれ達と<家族>として<同じ群れの仲間>として育ったからかパパニアンを狙うことはないんだが、そうじゃないかくは当然、狙うこともある。実際これまでにも、他の群れだったが何人かがかくにやられている。


この辺りは生きる為のことなので、俺は当然、口出しはしない。


ただ、ほまれの群れが狙われたとなると、心中穏やかではいられなかった。


ただこれも、とどろきが将来、群れを率いるボスとしての器を持っているかどうかの試金石にもなるのかもしれない。


ちなみに、ほまれは、めいと一緒に育ったからかマンティアンの気配に非常に敏感で、近くにいるとすぐに察し、早々にその場を離脱するという形で仲間を守った。


それに対してとどろきはどうするか。




なお、ドローンのカメラに捉えられたということは、当然、メイフェアもそれには気付いている訳だが、彼女は動こうとはしなかった。


メイフェアはあくまでほまれを主人(仮にではあるが)としており、いくらあいつの仲間だからってそれ以外のパパニアンについては、本来ならば積極的に守る理由がない。


とはいえ、仲間に犠牲が出るとほまれが悲しむことは分かっているから、自らにリンクさせたドローンを現場に向かわせたのだった。


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