ラッシュ(立て続けだな)

新暦〇〇一〇年七月四日。




なんてことを俺が考えてるうちにも時間は過ぎて、いよいよようの出産が始まろうとしてた。しかもその直前に、めいが妊娠したらしいという情報も。相手はもちろんかくだった。


そちらはとりあえずドローンで見守るだけの方向で。例の巨大生物の体の<家>もあることだし、そこでならかくも守りやすいだろう。


という訳でとにかくようだ。エコー検査で見る限りは、ちゃんとタカ人間アクシーズとしての特徴が発露してて、どうやらひかりあかりのようなことはない感じではある。心音もしっかりしてて元気だし、特に何事も無ければ普通に生まれてくるはずだった。


なんて思ってたら、さすがに三人目だからか本当に呆気なく出産は終わり、無事にようにとっての第三子、すいが誕生した。ようにとっては初めての男児でもある。


タカ人間アクシーズの子らしく、生まれてすぐに母親の体にしっかりとしがみつき、おっぱいに吸い付いた。これであとは無事に育ってくれることを祈るだけだ。


もしこのまま、すいが無事に育ってくれるなら、ように対しても一応の責任は果たしたということで、子供については<打ち止め>としたい。


もちろん、ようにむかってそんな風には言わないものの、でもまあとにかくそういう方向でいきたい。


ただ、れんのこともあるからな。油断はできないが。




その一方で、すいが生まれたということは、駿しゅんもそれだけ大きくなったということなんだが、


「う~む。さすがにこの大きさになってくると可愛げも無くなってくるな」


と思わずつぶやいてしまった通り、もうボクサー竜ボクサーとしても『ちょっと小柄かな』という程度の大きさにはなって、その顔つきもふてぶてしいものになっていた。可愛い子犬や子猫だったのが大きくなって『うわあ』ってなる感覚かな。


しかもちょうど、しっかりと鳥を捕らえてそれをバリバリと貪ってるとこだから、少々怖い。


本当に可愛い時期ってのは一瞬なんだなとしみじみ思うよ。


ただそれでも、ずっと見届けてきただけに、そういう意味での情は移ってしまっている。


「本来の仲間ではないものの傍で育った個体が果たして自然に馴染めるのかという、貴重な事例になりますね」


学者としての見地からシモーヌはそう言う。俺も、その点についてはそれなりに興味があった。


俺の子供達は、あえて人間としての在り方を教えなかったことが幸いしてかそれぞれ自然の中に帰って行けたが、それがボクサー竜ボクサーであってもそうなのかということを確かめることができそうだ。


しかし、この悪賢そうでふてぶてしい様子からすると、何の根拠もないが大丈夫そうかなと思ってしまったりするんだよな。


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