戻ってきてしまった話【完結/単発】

作者 小日向葵

15

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★★★ Excellent!!!

ある男は、病院で目を覚ます。
病院特有のその匂いによって、彼は混乱に呑み込まれる。

ここはどこだ?
俺は何をしている?
どうして病院にいるんだ?

現実を現実だと、受け入れられない。
混乱して、頭がぐちゃぐちゃになってしまう。


その、心情描写の仕方がお見事です。
主人公が思ったことを、そのまま描く。
余計な比喩やまどろっこしい表現がないから、するっと体に染み込む。

ストーリーに圧倒されるのではなくて、雰囲気に圧倒されるんです。
なんてことない話なのに、呑み込まれてしまう。
彼の気持ちがわかる、と思ってしまう。
独特な雰囲気が、この短編を盛り上げています。


戻ってきてしまった男の話。
彼は、『どこから』戻ってきてしまったんでしょうか?
現実?夢?妄想?別世界?

そういう考えを巡らせるのも楽しい作品です。

★★ Very Good!!

あらゆる物語は感動的・劇的なエンディングを迎える。そうあるべきとして作られるものだからだ。しかし、人生や日常は物語のようにはいかない。感動的な山場を越えたところで、先に続くのは平坦な日常だ。
痛快な異世界転生ファンタジーWeb小説としては「転生し、ハッピーエンドを迎えた先の物語」である本作は明らかな蛇足だが、生涯を描くというのならばこれは必要不可欠な失速なのだ。
可能なら、決して描かれることはないであろう彼の人生 / 転落の続きを見てみたいとも思う。