第252話 セイレーン達にお願いされた

俺達は亜人達に襲撃されたセイレーンの集落を救った。


亜人達は素材としてセイレーン達を攫うのが目的で、殺す気が無かった事から、殺された者は少なく数人程度で、殆どは怪我だけだったが、攫われたセイレーンは相当数いたらしい。


そんな中で、俺がみんなを回復したので、凄く感謝されているが、一人だけ膨れっ面のババアがいる。


セイレーンのおさだ。


「やっぱり、妾の事をババアと思ってたのじゃ」


「そりゃ、何処からどうみてもババアだろ」


「うぬ、女性に年齢の話をするとは、なんて失礼な奴じゃ」


「おいおい、女性って言う歳かぁ?そもそも、御礼もまともに出来ない奴が、失礼って言えるのか?」


「何じゃとぉ! 今回の襲撃は、主らの自作自演じゃ無いのかぇ! 主らが来て早々に襲撃があったのじゃ。主らの仕業じゃ無い証拠はあるのかえ! 仲間を返すのじゃ!」


「ほう。俺達が亜人を殺して、セイレーンを回復してどんなメリットがあるんだ?」


「ぐぬぬ、そんな事は知らん! 怪しい奴らめぇ! ここから出て行くのじゃ!」


「はぁ、そう言う考えかぁ、分かったよ。みんなぁ!引きあげるぞ!」


「はーい。助けたのに酷い話だよー」とハーピーのハルカ。


「了解にゃ。助けて損したにゃ」

とケット・シーのペロ。


「分かったのじゃ。勘違いも甚だしいのぅ」とエルフのエリ。


「承知しんした。こな集落、二度と来ないでありんしょう」と雪女のユキ。


「畏まりました。失礼極まりない村ですな」とヴァンパイアワイズマンのヨシゾー。


「ちょっとぉ!待って下さい!」

イリヤと数人のセイレーンが、俺達が出て行くのを慌てて止める。


「むがむが・・・」

文句を言い出しそうな、長のヨシノの口を塞ぐセイレーン達。


「一晩泊める事も出来なかった私達の集落を、救っていただき有難う御座いました」


イリヤは床に頭を着けて土下座して、御礼を言った。


「この度は本当に有難う御座いました」


続いて、数人のリーダーらしいセイレーン達も、土下座して御礼を言う。


一人のセイレーンが顔をちょっと上げて、上目遣いで続けて話始める。


「誠に勝手なお願いで恐縮ですが、攫われた仲間がおります。何度か救出に行きましたが、私達の力では救出する事が出来ず、今回もまた攫われてしまいました。何とか仲間達を救出していただきたく、・・・お願いできないでしょうか?」


他のセイレーンも再度頭を下げる。

「厚かましいお願いである事は、重々承知しておりますが、何卒!お願い致します」


「貴方達、良く恥ずかしげも無く、そんなお願いが出来るわね」

イリヤは正座したまま俯き、恥ずかしくて顔を赤くして呟くが、期待を込めて上目使いで俺を見た。


「ははは、本当に勝手で厚かましいお願いだ」


「・・・」

セイレーン達は頭を下げたまま、無言で俺の次の言葉を待つ。


長をチラッと見ると。


「むごむごぉ・・・」

俺の言葉に長は手足を動かして暴れ、拘束を逃れようとしている。


「恐らく、魔王軍四天王ガルダムの研究所に攫われたと思っている。確かに貴方達では荷が重いでしょう。しかし、俺達は目的があって行動していて、優先するのはその目的だ。そのついでに余裕があれば、助けるのは吝かではない」


「有難う御座います。私達は貴方達に縋るしか術がありません。ついでで構いません。宜しくお願い致します」


セイレーン達は再度頭を下げた。

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