第225話 Sランク冒険者達
「ぐひひ、奴隷女共を始末しておけぇ!げへげへ」
ロヤスゲ辺境伯は、折檻部屋を出ると満足げに部屋の外で待機していた従者に告げる。
「畏まりました」
無表情で頷く従者達。
従者達が折檻部屋に入ると、部屋の中は血塗れになって、四股を欠損した奴隷の女性が、何やら禁じられた薬を使われて、白目をむいて喘いでいた。
「はぁ」
諦めの境地で溜息の従者達。
ロヤスゲ辺境伯が廊下を曲がり、姿が見えなくなると、台車に奴隷の女性を乗せながら愚痴る従者達。
「はぁ、ロヤスゲ閣下の奇行は年々過激になっていくなぁ」
「本当に酷い有様だ。こんな仕事は家族にも言えないよ」
そこに現れたSランク冒険者『闇の殺し屋』イブキ。
黒髪に漆黒の上下の服を着て、黒いブーツに黒革の指ぬき手袋を付けた全身黒の男。
頬が痩けた痩せ型の体型の不気味な男が、誰も居なかったはずの空間に出現していた。
「ひぃ」
身体がビクつき驚く従者達。
「そいつらは俺が処理しておこう。おれの部屋に運べ」
「は、はぃぃぃ」
「くくく、今宵も楽しめそうだ」
小声で独り言をいうイブキ。
「お前もゲスだな」
イブキの後ろから足音を立てず歩いて来た、Sランク冒険者『剣神』ヤマトがイブキに声を掛ける。
灰色の着流しの腰に日本刀を差した、侍ヤマト。
「くくく、戦力は多い方が良いだろう。都市に潜入している魔物共の襲撃は近いぞ。くくく」
「ふん。襲撃者など儂の刀のサビにしてくれよう」
「くくっ、その時は任せるよ。くくくく」
イブキとヤマトの会話を聞かない振りをして、無表情になって台車を動かす従者達。
奴隷の女性を追って姿を消すイブキ。
「はぁ」
溜息をついたヤマトも、折檻部屋を出ると、ロヤスゲ辺境伯を護衛する為に用意された控えの間に向かった。
控えの間の中で椅子に腰掛けて窓の外を眺める深緑のローブの男、Sランク冒険者『賢者』ツバサが、ヤマトに声を掛けた。
ツバサは国宝の杖カドゥケイスを手にしていた。
カドゥケイスは、黄金色に輝く2匹の蛇が巻き付いた短杖、上部に白い双翼の装飾で、先端に緑の宝玉が取り付けられている。
「勇者パーティーの3人が殺されたそうだな」
「うむ、魔王軍の襲撃も佳境に差し掛かりそうだのう」
「いよいよ我々が呼ばれそうだ」
「そうだのう。ロヤスゲも何時までも自分の身を守るため、我々をここに留めて置く事は出来ぬだろう」
「ゲス辺境伯の護衛など、懲り懲りだよ。早く戦場に行きたいものだ」
「うむ。しかしロヤスゲからこの国宝の刀を貰っているからのう。皇帝陛下の勅命でも無ければ難しいだろう。お主もカドゥケイスを手放してまでも、勇者パーティーに加わる気は無いのだろう」
ヤマトは腰に差す彎刀の国宝クトネシリカを撫でる。
クトネシリカは柄頭にフェンリルの飾りがあり、そして雄龍が角を立てながら鍔の縁に、雌龍が鞘一面に絡みつき鞘尻に尾を振り立てる飾りと、鯉口には毛の生えた狐の飾りがある聖獣の刀。
「そうだな、ロヤスゲから貰ってはいるが、国宝の杖と刀だ。陛下からの下賜だろう。陛下の勅命を受けて前線で暴れたいものだ」
窓の外の遠くの景色を見詰めるツバサ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます