第149話 ヴァンパイア6

地に落ちたヴァンパイアアルケミストのヨシゾーは、闇から元の姿に戻っていた。


「ひ、ひぃ」

怯えるヨシゾー。


俺はバズに乗ってヨシゾーの前に飛び降りた。


「・・・」


泣き喚くヨシゾーの頭に手の平を当てて、無言で『生命力吸収ライフドレイン』を発動した。


そして、スッケベンを見る。


「げひぃ。あわわわわ」


腰を抜かして、怯えるスッケベン。


ヴァラカの闇槍で貫かれ、ハルカの風刃に斬られて、身体中に傷があり、血が流れているスッケベン。


不死性が強くない普通のヴァンパイアであるスッケベンは、回復が出来なくなるほど弱っていた。


「僕の力じゃ殺せなかったよ」

ハルカは悔しそうにしている。


「ユキの炎の魔剣では、殺せないかな?木の杭で心臓を貫けば殺せるって言う話もあるしね」


「・・・」


ユキは無言で魔剣をハルカに差し出す。


ハルカは魔剣を受け取り突きの構え。


「ナイトやアルケミストは無理じゃが、弱ったヴァンパイア如きは、心臓を一突きで殺せるじゃろう」


「げひいいい。た、たすけ──」


ズシュッ!


ハルカは魔剣でスッケベンの心臓を突き刺すと、魔剣から炎が吹き出し、スッケベンを焼き殺した。


「死んだかな?」


「うん。気配が無くなったし、HPがゼロになっているから、完全に死んだね」


「そうか・・・」

俯き、立ち尽くすハルカ。


「ん?」


「主様、どうしたのじゃ」


「向こうに気配がある」


ドラムのブレスで焼き尽くされた、ヴァースの消し炭を指差す。


消し炭がピクッと蠢く。


俺はヴァースの消し炭に近付く。


「ひゃああああああ」


消し炭は上半身のみ、ヴァースの姿に戻った。


「ひぃ、み、見逃して下さい」


下半身も復元したヴァースは、泣きながら土下座した。


「お前はそう言って命乞いした者を許したのか?」


「も、勿論命乞いした奴等は見逃しました」


「本当か?」


「ほ、本当でしゅ」

眼が泳いで恐怖で噛んでるヴァース。


俺は眷族にしたヴァンパイアのアルを、ダンジョン機能の転移で呼んだ。


「アル、此奴が命乞いした者は、見逃して来たって言ってるけど、本当?」


「え!ヴァース様は、情け容赦無い人でした。慈悲なんてありません!」

アルはきっぱり即答する。


「おい、嘘じゃないか?」


「貴様あああ!嘘をつくなあああ!」

ヴァースはアルを睨む。


「おいおい、アルは俺の眷族だから嘘は付かないぞ」


「え!」

冷や汗を流して、驚愕のヴァース。


「ペロ、頼んだ」


「任せてにゃ」

ヴァースの影から、ペロの闇の触手が伸びて拘束した。


俺は無言でヴァースの額に手を当て『生命力吸収ライフドレイン』で殺した。


レベルアップのメッセージが流れた。


今回はバズもユキもドラムもレベルアップしたらしい。


そう言えばドラゴンのドラムですが、バズもユキも庇わなかったらしくて。


ヴァラカの闇槍がかなり突き刺さって瀕死でした。


「ひん、酷い」

泣いてるドラム。


ドラゴンの鱗さえ貫く威力って凄いね。


それを防ぐユキとバズも凄い。


勿論、ドラムの傷は俺の気功で治療しましたよ。

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