第125話 『凶鬼』

俺達は『殲滅の旅団』の拠点をダンジョン化して待ち構えていた。


そこに、帰って来た『殲滅の旅団』マスターである虎獣人『白虎』のタイガ達。


助っ人でSランク冒険者の『凶鬼』カナタを連れてきていた。


俺の横からダルアが顔を出す。

「その服と刀って、明らかにこの世界にはなさそうなものね。もしかして、カナタさんって転移者ですか?」


「転移者ねぇ?何処かで聞いたことあるなぁ・・・。この服と刀を持ってた奴がそんな肩書きだったかもね」


「え?その服と刀の持ち主は何処に居るの?」


「何処にも居ないよ。殺したから」


「え!」


「この服は気に入ってるんだよ」

急に『凶鬼』カナタの身体が巨大化した。黒いキャップから2本の角が飛び出す。


カナタの身体に合わせて服と刀も大きくなった。


「こんな風に身体が大きくなっても、壊れないからなああああ!」


3mを超える巨体になったカナタは、鬼となっていた。


巨大な身体から発する強烈な威圧感と迫力、見た者は怯え、身動きが出来なくなる様な鋭い眼光。


「ははは、どうだ。カナタさんの迫力は、ハルカ、俺の性奴隷になるなら、特別許してやってもいいぞ、他の奴等は殺すがな」


「僕は2度とお前にこの身体を触らせる事は無い!」

ハルカは両腕で胸を抱く。


「へぇ。ゴブリンに陵辱された淫女が、大きな口をたたくなだわ」

『玉兎』ディアがハルカに叫ぶ。


「このっ、僕は淫女じゃ無いぞ!」

ハルカは悔しさに涙ぐみ怒りを堪える。


「ゴブリンの『ピー』は気持ち良かったかい、淫売ハーピー!」

エルフの火魔法使いフィーダもハルカを罵る。


「エルフの風上にも置けぬのじゃ」

エルフの『疾風』エリが現れた。


エリの矢がフィーダに放たれた。


『疾風』エリは矢を番えてから射る迄の動作が速く、高速の矢を放つ。


『白虎』タイガが横から矢を弾いた。

「む、いつの間に矢を放った」


「弾いておいて言うのう」


しかし、タイガのパーティー以外の数人の冒険者の額にエリの矢が刺さっていた。


「くっ、なんという速さだ。矢を番えて放つのが分からないぐらい速い。しかも連射出来るとは」


「伝説の冒険者『疾風』に匹敵するだわ」


「戦闘が始まった様だな」

カナタが日本刀を抜いて八双に構えた。


ハルカが座る王の椅子に飛び込み、斬撃を放つ。


飛翔し躱すハルカ。

俺とダルアは横に飛び躱す。


王の椅子は真っ二つに切断されていた。

「ちょこまか逃げやがって! いくぞおおおおおおおお!」


刀を振り回す『凶鬼』カナタ。


躱すハルカ、俺、ダルア。


「静かにしなんし!」

雪女のユキがカナタの背後に現れて、右手を横に振る。


氷柱に覆われるカナタ。


しかし氷柱に罅が入っていく。

氷柱を壊し中からカナタが現れた。


「冷てええええ! このあまああああ! 頭に来たぞ!」


カナタが瞬足の踏み込みから、日本刀でユキを斬り払い、ユキの身体を上下に切断する。


しかし、ユキは冷気になって日本刀がすり抜ける。


「何だ。お前はああああ!」


「その程度の剣撃で、ワチキは斬れんせん」


ユキは下がって、無表情でカナタを見詰める。

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