第69話 勘違いで大違い

猫の王国王宮。

国王の執務室。


椅子に座る国王『光猫』のライル。

向かい合って立つ宰相『風猫』のウィラと騎士隊隊長『土猫』のロウガ。


距離を置いて跪く衛兵隊小隊長ホクシンがいた。


国王ライルが口を開く。

「国と敵対すると言われた?

どうして、こうなった?」


宰相ウィラがホクシンに問いただす。

「儂はショータ殿とペロ殿をお連れする様にと言ったよな?


スタンピードで騎士隊、衛兵隊の殆どが負傷していた。


その中で、無傷だったお主がショータ殿を知っていると言った。


そして自信満々に連れて来ると言うから指示したのだ。


知り合いなら王宮に来て頂く事も可能と思ったのだが、怒らせてしまうとは・・・。」


ウィラは王宮に招待しに行くだけで喧嘩になる理由が分からない。


断られれば、その事を報告すれば良い。争う必要は無いのだ。しかも知り合いがお願いに行ったのだ。


ホクシンは疑問をいだき呟く。

全くなんの事か分からない。


間抜けの子供を王宮に連れて来るだけの認識だった。

「お連れする?・・・来て頂く?

・・・怒らせる?」


そして必死に説明する。

「確かに丁寧・・に連れて来る様に指示は受けましたが、所詮魔抜け。

それ程気を使う必要はありません。


それより、あの者達は無礼者です。

陛下の書状を見ながら王宮に来るのを断るなんて言語道断!


その上同行した私の部下を傷付けました。至急兵を派遣し、捉えて極刑に為べきです。他に示しがつきません。」


騎士隊隊長ロウガは悲しい顔をしてホクシンを見る。

「ホクシンとやら、お主はショータ殿と仲が良い訳ではなかったのか?」


「ご冗談を・・・。魔抜けごときと仲が良い訳は無いじゃ無いですか。

二三度会話しただけです。」


国王ライルは溜息をつく。

「はぁ。スタンピードを解決した英雄のショータ殿とペロ殿を王宮に招待して御礼をした後、今後の協力体制をとりたかったのじゃが。敵対とはな、正反対になってしもうた。」


ホクシンは更に戸惑い考え込み呟く。

「・・・スタンピードを解決?

・・・英雄?・・・協力体制?」


そして、ホクシンは意を決して、一大決心を持って国王に意見した。

「陛下!畏れ多いながら、意見を言わせて頂きます。」


「な、なんだ?」

「陛下は騙されております。魔抜けごときがスタンピードを解決出来るはずがありません!

誰かの功績をさも自分が解決したように言っているに違いありません!」


「おいロウガ、この馬鹿者をどうにかしろ。」

イラッとして、つい昔の口調になる光猫、国王ライル。


「いや、頼んだのはウィラだろう。」

同じく若い時の口調で返すとロウガ。

ウィラがホクシンにちゃんと説明出来ていなかったのは明らかだ。


ウィラが諫める。

「2人とも口調が冒険者時代に戻っているぞ。


ホクシンよ、ショータ殿が我々の目の前・・・でサイクロプスとリッチを瞬殺して助けてくれたのだ。

間違う筈が無い。

実力は誰よりも我々が知っている。


その上、ドラゴンを使役して、

仲間達も我々七猫の上を行く実力。

喧嘩をすればこの国は滅亡するぞ。

もう下がって良い。

追って沙汰を出す。


この国が滅亡しないように考えねばならんのだ。」


ホクシンは驚愕し、しどろもどろ。

「え、ドラゴン・・・、七猫より?

滅亡?ま、魔抜けだったぞ。

・・・しかしあの威圧、・・・。」


ホクシンは大声でウィラに訴えようとした。

「ウィラ様!あの者達は・・・」


ロウガは大声を出す。

「黙れホクシン!


誰かいるか!直ぐ来い!

王国を危機に陥れたホクシンを牢に入れておけ!


ウィラ、手緩いぞ。」


「ろ、牢??」


騎士隊が数名執務室に入ってきてホクシンを連行した。


連行されるホクシンは信じられない顔をしてぶつぶつ呟いていた。

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