第114話 北高祭2日目 段取りを決める

「電子ピアノですが、まずカーテンで包んで渡り廊下近くまで運んで下さい。そっと壁に立てかけて何食わぬ顔で待機です。まどろみさんや美咲さん亮くんと部室を出たらグループメッセージに指示を送ります。そしたら渡り廊下の中央付近にスタンドを立てて電子ピアノを設置しておいてください」

「わかりました!」


 泉ちゃん親衛隊はいよいよ出番が近づきガッツポーズを取った。


「アンプやマイクは持って行かないから電子ピアノ本体のスピーカーと、まどろみさんの生声でやります。亮くんはギターの音を押さえ気味にできますか?」

「弱音器を付けるから音量は20%くらいカット出来るよ」


 亮は弦にスポンジのようなものを挟んだ。少し音が小さくなったがちゃんと演奏出来てるし問題は無さそう。剣谷さんは黙って聞いてるだけだ。失策で親衛隊1人が生徒会に捕まったからへこんでるの?邪魔だなあ、早く校外に摘まみ出されて欲しいよ。


「俺たちにも指示を!」


 生徒会室に討ち入りするのが嫌だから、みこさん親衛隊の待機組2人は、剣谷さんが凹んでるうちに何か他の指示を出してくれと目で懇願している。

 まどろみさんが剣谷さんに聞こえないように小声で指示を出した。


「真知子先生に現状報告をしてきてくれ」


 名案だ。北高祭用のメッセージグループは剣谷さんに筒抜けだから直接行ったほうがいい。


「行ってきます」


 小声で答えて2人は部室を出て行った。そうだ、生徒会に連行された泉ちゃん親衛隊モブAさんはどうなったんだろう。



□ 親衛隊 × 生徒会 (2回戦)


「だから、携帯を何に使うつもりだったんだ?何故2組の生徒が1組の宮前先生に許可証を発行してもらったんだ?」

「黙秘権です」

「宮前先生の手先なんだろ?合奏同好会も絡んでるのか?」

「黙秘権です」


 厳しい取り調べが続いたが、泉ちゃん親衛隊モブAはだんまりを決め込んだ。


「仕方ないですね」


 生徒会長が立ち上がった。


「我々に協力していただいたら、モブキャラから名前付きのサブキャラにして差し上げましょう」

「サ、サブキャラ…」

「そうです、昇格ですよ」

「名前付き…」


 モブAはしばらく考え込んだが、


「い、いやだめだっ。泉ちゃんを裏切るなんて出来ないっ、少しでも心が動いた俺のバッキャロ~っ」


と叫んで生徒会室を飛び出していった。


「…あ、逃げた、待てっ」

「風紀委員長、追いかけなくて良いですよ」

「しかし…」

「今あのモブは、泉ちゃんを裏切るなんて出来ない、と言ってましたよね?」

「はい」


「恐らく1年1組小清水泉のことでしょう。通称お嬢。合奏同好会所属…これだけ分かれば十分です」


 携帯使用許可証、合奏同好会、このふたつは確実に何か関連がある。生徒会長は確信した。





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