第20話 キーボード

 翌朝、微睡びすいは同好会メンバーを集めた。

 宮子は亮から報告を受けていた発声練習作戦のことだと思い美咲について来た。


「部室が決まった」


 微睡は顧問の真知子先生から来たメッセージを見せた。


まいっ○んぐ

〔部室決定 旧館3階の一番グラウンド側の空き教室〕


「ええと…」


 亮はツッコミを入れずにはいられなかった。


「まいっ○んぐって?」


 微睡は昨日学ランをかけてくれた亮を見ることが出来ず、スマホの画面を見ながら答えた。


「先生とID交換をした後で、まいっ○んぐって何だろうと思って調べたんだが、どうやら昔「○いっちんぐマチコ先生」というアニメがあったらしい」


 先生の名前は宮前真知子。


『真知子先生だからまいっ○んぐかー』


「私達が生まれるはるか昔、80年代前半にやってたアニメだよ。決め台詞は○いっち~んぐ。詳しくはウィ○ペディア見てね」


 宮子は決めポーズを真似しながら解説した。


「宮子はアニメ詳しいのか?」

「うん!まどろみさんも?」

「詳しいとまでは言わないが昼間に寝過ぎて夜中に目が覚めた時に見てる」

「今度アニメ話しよ~!じゃID交換ね」

「あ、うん」


 亮がアニメ嫌いだったらどうしよう。変に意識してしまう。


「そ、それでだ、キーボードも今日持って来てくれているらしい、放課後集まれる?お嬢は昨日ピアノレッスン変更してたが」

「大丈夫です!昨日の夜に受けました」

「じゃあ放課後、部室に集合。鍵は私が先生のところに貰いに行ってくるよ」


「スマホの電源切って鞄の中にしまえー…(中略)…ゲーム中のヤツは1分待ってやるから終了処理をしろー」


 真知子先生が入ってきた。この先生にお色気は無いなあ。


 放課後、微睡びすいは職員室に鍵を取りに行った。


「お、鍵を取りに来たか。それとこれがキーボードだ」

「え?」


 そこにはキーボードの他にアンプや椅子、スタンドやコードなどが置いてあった。

 キーボードがひとつだけと思っていたので、微睡は面食らった。


「これ全部ですか?階段もあるし1度に運べないですね…」

「うん?そうか?私は駐車場からいっぺんに担いできたぞ。これから職員会議じゃなかったら運んでやるんだがなあ」

「部室に行って誰か呼ん…」

「ちょっと待ってろ」


 すぐに校内放送が始まった。


「1年1組、日之池ひのいけー、すぐに職員室にーい、繰り返す、1年…」

「だ、だから宮前先生、校内放送は外部にも聞こえるから…」


 校内放送は途中でブチっと切られた。


「まあ伝わっただろう、少し待ってれば来るよ、行ったり来たりするより早い」


「失礼しまーす」


 すぐに亮はやって来た。


「お、日之池、これを部室まで運んでくれ」

「これ路上ライブセットじゃないですか」

「そうだ、それを置いていった友達が路上ライブやってたからな」

「良いんですか。その友達が取りに来るとか無いんですか?」

「大丈夫だ。手切れ金がわり…あ、いや、職員会議が始まるから持って行ってくれ、終わったら部室に行く」


 それ、友達じゃなくて元カレじゃないかああああ。


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