第17話 歌わない美咲
「おはよー、お嬢」
「おはようございます、宮子さん」
「あのさ、美咲なんだけど同好会でなんかあった?」
「え?どうしてですか?」
「いや~なんか昨日の昼休みから落ち込んでるみたいでね~」
「うーん、なんかあったかと言われれば、歌うことを頑なに拒否してました」
「あ~、やっぱり歌かあ…」
宮子さんの表情が少し曇りました。やはり美咲さんは歌うことに対してなにかあるようです。
「お嬢の同好会って音楽系の活動するんだよね?」
「はい」
「じゃあ知っといたほうが良いかな、あのね…」
「はい」
宮子さんはさらに真面目な表情になり
「美咲ね…」
「はい」
眉間にしわを寄せながら声をひそめて
「音痴なの」
「はい……はい?」
「並みの音痴じゃなくてね、S級で星5くらいの音痴なの」
S級とか星5とか、よくわらないですが、凄いということのようです。
「それで小学校の時にものすごくからかわれてね、人前で歌うことをやめちゃったの。中学の時は音楽で歌のテストがある日は学校休んで、別の日の放課後にひとりで受けてたりしてたんだよ」
「歌うことにトラウマがあるんですね」
「そうなの、あんなに明るくてフレンドリーなのに、みんなでカラオケ行こうって誘っても来ないんだ」
いつも明るい美咲さんが、そんな思いをしているのは悲しいです。
「じゃあ同好会で美咲さんに歌ってと言うのは避けたほうがいいですね」
「いや、そうじゃなくてね…私も協力するから歌えるようにしてほしいんだ」
確かに、歌えるようになったほうが楽しいです。みんなでカラオケ、私も行ったことは無いですけど楽しそうです。
「昨日の感じだと、キッカケ作りが難しそうですね…歌ってと直球で言ってもダメですよね」
「それは絶対ダメだよ~。同好会とは関係有るような無いような流れでなんとなくって感じが良いかなあ」
「難しそうですね。普段歌うような場所と言ったら、やっぱりカラオケ屋さんですよね」
「そうなんだけど、歌を歌いますって場所だからね~」
確かにそうです。歌わなくて良いからカラオケ行こうと誘っても、なんで?となるでしょう。
「このことは同好会の人に話しても大丈夫ですか?」
「うん、美咲には内緒でって事になるけど…と言うか私のお願いだから私が話すよ。美咲抜きでみんなが集まるのが難しかったら個別に話してもいいし」
「わかりました、美咲さんのためにやってみます!」
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