第39話 うっせ、ばーか! 保育士もどき!

「台風みたいな人だったね。玉村たまむらさん」

「たまねえは、これから記事作成に忙しいだろうからね。やっと二人きりだね💓」


 玉村たまむら君の取材活動も終了。


 本人は、あっさり仕事場に戻って行った。


「もじもじするな!? あくまで、職務の一環いっかんだからね!」

「よよよ。貴女にとって、私は何なのよ! 仕事とどっちが大切なの!」


 この問いに。


 正解など存在しないと思うけどね。


 まつりちゃんは、どう答えるのかな?


「……殴るよ?」

「ドメスティックな関係なの!? こいつ、女神様じゃねーよ!? 破壊神だよ!? 小生しょうせいが悪かったから!? むぎゅーで勘弁かんべんしてよお!」


 ふへへへ。お待たせ! 


 祀理まつり成分の補給だ! むぎゅーしてやる!


「この、ゲス御門みかど! ストレッチの時間よ!」


 押し入れから、くのいちが登場しやがった!? 


 ものども、であえー!? 切り捨てろ!?


「そうだった!? たかさき君の存在を失念!? ぐげええ!?」

「咲さん!? どうしてそんな所に!?」

祀理まつりさん、ちょっと待って。こいつの柔軟体操が終わってからね!」






満身創痍まんしんそういだよ。ふえーん、まつりちゃん、慰めておくれ」

「こ、こら! 引っ付くな! 君は女友達なのかな!?」


 祀理まつりの足元に。すがりつく。


 えへへへ! 人との触れ合いは大切だもんね。


「それよりも。? 咲さんを監禁でもしたのかな? しちゃった? ねえ? しちゃった?」

「ひえっ!? ヤンデレ属性!?」


 完全に職務モードの祀理まつり


 他人行儀に、さんづけだと!?


「たかさき君が勝手に居座ってるだけさ! たま姉には、見つからない方が得策だろう? 弁護士が俺の所に居るだけで、記事が書けちゃうもんね!」


『第一発見者の自宅に弁護士。たがいにストレッチにいそしむ!?』


 完全にスキャンダラスな見出みだしだ。


 週刊誌ネタとしては最適過ぎる話題だろう。


 なので、たま姉と鉢合はちあわせない為に――押し入れに隠れて貰った。


「そもそも、あの記者を招き入れる必要あったのかしら? せっかくお風呂にも入ったのに。押し入れなんかに閉じ込められたら、意味無いわね」

「ある程度、記事内容に介入かいにゅう出来たじゃないか。いわれのない事を書かれると面倒だろ?」


 玉村たまむら君の記事作成にも。


 アドバイスをしてやった。


 内容としては、犯人についての考察。


 今後の推移をかみ砕いて説明したものだ。


 遺体発見状況をべらべら語る訳には、いかないからね。


 例え、それが真実だとしても。


 伏せておくべき事も存在する。


 ……玉村たまむら君にも分かって欲しいが。大けがする前に。


? 咲さんを無理矢理、お風呂場に連行したの? しちゃったの? へえ、ふーん」

「生気の無い瞳で、こっち見んな!? 何で俺が非難されるの!? たかさき君が悪いだろ!?」

御門みかどがひどい事を言うのよ? 汗まみれで、ぐへへ! な体臭してる! って」


 冤罪だ!? 責任を俺に!? 


 ぐへへ! な体臭って何だよ!?


「そんな発言してねーし!? やりたい放題したのは君だろ!? まつりちゃんなら、分かってくれるよね!?」


 たかさき君の謀略ぼうりゃくなんだ!


 風呂場を勝手に使用したのは。彼女なんだ!


? おおかみ少年の逸話いつわを知ってますか? 日頃からセクハラまがいな発言をしていると――」

「うっせ、ばーか! 保育士ほいくしもどき! ゆるふわ雰囲気が、とても素敵だと思う💓 ぶっちゃけ、たかさき君よりも祀理まつりの方が魅力的だよね」


 あれこれと説教をし始めたので。こちらも応戦する。


「暴言を言いながら、めるな!? さ、咲さんに対しても失礼な評価だよ!?……ほんと、ばか」


 ネガティブな情報は先に。


 後の方にポジティブな情報を与えると。


 この通り。


 まつりちゃんも恥じらい乙女になるのだ!


「そうね。私は妖怪、怪獣だものね? ふふっ……ミーカーおおお!」


 自分で言ってるじゃん!?


 たかさき君!? いやあああ!?

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