第16話 まさしく、想定外の化物に遭遇したって事さ。

「ほう。三人で夕食をね。両手に花とは、やるじゃねえか」

「アリバイは完璧だろ? むしろ、たかさき君が容疑者じゃないかな? 見ただろ? あの殺意むき出しの彼女を!? こわいよお!?」


 警察署内の取調室にて。


 簡単に、遺体発見の経緯を説明している所だ。


「……しかし、また同じ場所で犯行とはな。どう思う?」

「さてね? 犯人じゃないし。ただ、重ねて犯行するには。あそこは安全地帯だったのだろう」


 実際の所は、犯人に聞かないと分からんけど。


 あくまで、推測すいそくだ。


「安全地帯だと?」

「最初の事件を起こしたのにも関わらず、自分の所まで捜査の気配を感じられない。まあ、一種の成功体験だね。確実にまた犯行をと考えた時に、どこでやる? 最初の場所さ。安全に犯行が出来るのは体験済み。まさか、また同じ場所で!? って警察の裏もつけるし」


 苦虫をみ潰したような顔しないでくれよ?


 俺、犯人じゃないからね!?


「ただし、三度目は無いね。同じ場所で犯行するには、本来、遺体は別の場所に遺棄しないと。一度目と二度目も、遺体は公園に置き去りだろ? それに、しばらくは、あの公園は、警察がきっちり見張るなり、対策を強化するだろうからね」

「……なるほどな。もし、三度目があるなら別の場所か。または、似ているような条件がそろってる場所か?」


 人の気配を感じない場所。時間帯。逃走経路。


 数えれば、きりがないけど。


「そこら中、監視カメラを設置しておけば、事件はあっさり解決するけどね」

「何かと反発も少なくないからな。監視社会がどうとか、プライバシーとかな。車に搭載とうさいされてるドライブレコーダー、店の防犯カメラぐらいだな。捜査に使える映像は。咲嬢さきじょうも独自で調査しているらしいが」


 たかさき君の調査ねえ。


 思い込みで犯人像を決めつけて。


 映像に容疑者がうつっていても。見逃してる可能性もある。


 本人に言ったら、ぶん殴られそうだけど。


「……他に、気になってる事は?」

「……今回の被害者は、前回よりも学年が上だろ? まあ、中学生に近いな。それに、事件の事も周知されていた。学校でも注意喚起されてるだろうし。それなのに、被害にあってる。あからさまに怪しい人物だったら、回避行動が出来ると思う。年齢的にもそんなに幼くないし。となると、微塵みじんも犯人と結びつかない人物の犯行。まさしく、想定外の化物に遭遇したって事さ」


 単に、恐怖で何も出来なかった可能性もある。


 それにしても、犯人像がかめない。


 快楽殺人系みたいだが。


「今後の犯人の動きだけど。まあ、またやるよね。大人しく潜伏って訳にもいかないだろう。二度目の犯行も、無事にやり遂げたからね。有頂天状態さ。コレクションの下着も増えたし」

「犯人が犯行を重ねて、自滅して逮捕か。警察が証拠を集めて逮捕するのが先か。結局、そこに行きつくのかよ」


 もしくは、犯行の最中に。


 誰かが捕まえるって事も。


 そんな屈強な目撃者が居たら。


 苦労しないか。

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