第12話 この時こそ――私が想定外の化物に。やられてしまった瞬間だった。
「はあ、はあ。食後に急な運動は、するものじゃないわね」
けたたましいサイレンが。
嫌でも聞こえてくる。
新たな犠牲者が出てしまったのかしら?
警察署を目指して。
マラソンランナーの真似事をしている。
事件現場が分からない以上。
警察署で事情を
「大通りを走っていれば、誰か知り合いの警察官を見つけられるかしら?」
その場合、自転車で急行している警察官?
いや、緊急車両のパトカー?
「……現場に向かっているパトカーが、私の存在なんて気づく訳ないか。とにかく、急いで走ってやるわよ!」
広いスクランブル交差点で信号待ち。
いきなり、
「もう、
その間にも、パトカーが数台通り過ぎて行く。
と思ったのだが――
「おい? そこに居るのは、
「あ、赤城警部!?」
目の前で急停車したパトカー。
助手席の窓ガラスが不意に開く。
渡りに船とは、この事ね!
「事件ですか、赤城警部? いや、そんな事よりも――」
「悪いが事情を説明するのは、車の中でだ。早く乗りな、
「私の存在に気づくなんて。
急いでパトカーの後部座席に転がり込み。シートベルトを装着。
「まあな。いい女の立ち姿とかは、一度見たら忘れねーからよ。ぬお!? いきなり発進させるな!? さつき!?」
「はい、貴方の上司のさつきです! 現場にお急ぎですから!」
シートベルトのありがたみを肌で実感した。……運転者は姫署長!?
「何で署長が運転を!?」
「俺もそう言ったのによ。困った上司だぜ」
「運転ぐらいお茶の子さいさいですから! 現場は待ってくれませんので!」
思ってた以上に行動的な署長さんね。
赤城警部も色々と苦労してそう。
「それで、この事態は? やっぱり?」
「……ああ。先程、通報があってよ。死体を見つけたらしい。詳しくは分からねえ。被害者は小学校高学年の女子児童。心臓一突き。例によって、下着を持ち去っているとの事だ」
「何たる畜生の所業ですわね! ……第一発見者を懲らしめて吐かせましょう!」
確かに、第一発見者を疑えと言うのも珍しくは無い。
捜査を進めるにあたっては。
形式的に事情を聴くことになるだろう。
「……この場合、通報者だけどよ。
「え? 私も事件の詳細は知らないわ? その為に、警察署に向かって――」
そう。詳細が分からないから。
こうして駆けずり回っているのだ。
どうして、私に。
第一発見者の事を聞くのだろう。
心当たりなど無いはず。
想定外の質問。
そう言えば、
想定外の化物が何とかって述べていたわね。
予想外の出来事に慌てふためいて。
思考停止状態に
「その第一発見者は、なんと――」
この時こそ――
「あの、
私が想定外の化物に。
やられてしまった瞬間だった。
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