第11話 ……早く犯人が捕まればいいのにな。

「く、暗闇だね!? この時間帯の公園は!? 外灯がいとうをもっと増やした方が、良いと思うよ!?」

「怖いなら無理して付き合わなくても良かったのに。ねえ、たかさき君?」

「分かってるわよ。献花台にお供えして、合掌するだけ。変態さんにセクハラ行為をされたくないもの。ねえ、祀理まつりさん?」


 べ、別に、怖くないもんね!? 


 み、御門みかど君のセクハラの方が怖いかも!?


 そもそも、御門みかど君は。


 何故あんな条件を出したのだろう? 


 うーん。さっさと目的を果たして、帰りたいからかな? 


 アニメの深夜放送を心待ちにしているから?


「おっと、食べ過ぎたみたいだ。お手洗いに行ってきまーす。君達は、念仏でも、神様にでも祈っていたまえ」

「ちょっと? 御門みかど君?……本当に、勝手な人なんだから」

「ちょうどいいわね。御門みかどが居たら、騒がしくて鎮魂にならないでしょ?」


 確かに。お供え物を勝手に飲食しそうです。……あははは。





「……たくさんお供え物がありますね」

「……ええ。小学生の女の子だったから。子を持つ親御さん、同級生とかがね。お菓子や、花束を」


 咲さんもバックからお菓子を取り出した。


 コンビニで情報収集するついでに購入したものだろうか。


「あっ、私も何かお供え物を用意しとけば……不覚です」

「いいのよ? 急に私が誘ってしまったから。こうして、手を合わせるだけで。優しい祀理まつりさんだから。きっと被害者の女の子も分かってくれるわよ?」


 咲さんに気を遣わせてしまった。


 うーん。大人の女性には程遠いなあ、私。


「……早く犯人が捕まればいいのにな」

「……そうね。一刻も早く」


 ありきたりな感想を述べる事しか出来ない。


 ああ、そうか。


 これが、いわゆる。


 無念って言う事なんだろう。


「……これじゃあ、御門みかどになじられて当然ね。せっかく、祀理まつりさんの就職祝いをしたばかりなのに。しんみりさせちゃったわね。ごめんなさい」

「いえいえ!? そんな!? 頭を上げてください!? こちらこそ、いつも御門みかど君が不遜ふそんな態度を!?」


 御門みかど君を引き合いに出してしまった。


 本人が知ったら。不機嫌になるよね。


「そ、そう言えば、御門みかど君、遅いな!? お腹いっぱい食べたから、腹痛にでもなったのかな!?」


 気まずさを紛らわせる為に、話題を変える。


 肝心かんじんな時に絡んでこない。


「もしそうだとしたら、いい気味ね。今夜は、ほとんど御門みかどの食費だったから。ちゃっかりデザートまで注文して」


 御門みかど君が、やりたい放題注文したので。


 私も遠慮なくご馳走をいただけたのだ。


 咲さんと二人きりだったら。


 きっと見栄を張って、一番安い料理を頼んだだろう。


「ぐえええ。気持ち悪い。祀理まつりちゃん、そこのベンチで膝枕ひざまくらしてくれよお!」

「いきなりどうしたの? やっぱり、食べ過ぎたの? ほら、しっかり?」


 御門みかど君のリクエスト通りに。


 ベンチまで誘導する。


 高校時代から虚弱体質は変わっていない。


「高校時代から世話をかけるね。保健委員の祀理まつり君。で? 膝枕ひざまくらは?」

「はいはい。やらないと何をされるか分からないし。あくまで、救護措置だから、勘違いしないように!」

祀理まつりさんが女神に見えて来たわ。私には絶対無理ね。思いっきり、御門みかどのボディーを殴ってしまいそうだわ」


 はわわわ!? 咲さんの存在を忘れてた!? 


 つい、いつものクセで介護してしまった!?


「他人のイチャイチャを覗き見るなんて、悪趣味だな。とりあえず、お呼びじゃないよ。呼んでいるのは、あっちのサイレンかな?」

「イチャイチャしてないからね!? 咲さん!? 御門みかど君のたわ言だから!?……パトカーのサイレンかな?」


 遠方からサイレンが鳴っている。


 何かの事件、事故だろうか?


祀理まつりさん? そこのお荷物野郎をお願いね? 私はちょっと急用ができたから。またね、祀理まつりさん」

「はい、さようなら咲さん。……行っちゃったね」

「ふう。ようやく立ち去ったか。……ここからが、めんどくせー展開だよ」


 おそらく、咲さんはサイレンを追って行ったのだろう。


 情報収集だね。


 私も、御門みかど君の体調が戻り次第、帰りますか。


 めんどくさい展開? って?

 

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