第10話 自ら進んで呪われに行くようなものだ。

「今夜は、大変ご馳走になりました。私も早く一人前の社会人になって、咲さんみたいな素敵な女性を目指しますね!」

「そんなに気にしないで? 祀理まつりさんは十分素敵よ?」

「たかさき君が素敵な女性? ただの、敵な女性だけどね!」


 祀理まつりも洗脳されてるぜ。


 チョロいな。やれやれ。


「こら、御門みかど君! 咲さんにお礼を言いなさい! 食後のデザートにプリンやらアイスを注文したでしょ!」

「他人におごれるだけの金銭的余裕、人のつながりに感謝するんだぞ? ふははは! たかさき君、次回は焼肉だから! 覚悟しておけ!」

「どうして、私がたしなめられてるのかしら!……こ、こいつ!? 次回なんて無いわよ!」


 あら? 残念だな。


 せっかく、弁護士先生のお金を。世間に還元させようとしたのに。


 仕事一筋でお金を貯め込んでいるのだから。


 むしろ、お金を使う機会を与えてやらないと。うんうん。


「たかさき君? 真っ先に家に帰りたまえ。寄り道しないように! 余計な行動しないように!」

「咲さん? この後、予定があるの? 夜は危険ですよ? 一緒に帰りましょう?」


 ナイスだ! 祀理まつり! 


 たかさき君を素直に帰らせるのだ!


「その前に寄り道をしていいかしら?」

「却下。あのねえ、たかさき君? 先程の会話をもう忘れたのかい? 心霊スポット巡りは、禁止だ!」


 諦めの悪い女だな。


 自ら進んで呪われに行くようなものだ。


「心霊スポット? 咲さん、そんな趣味が?」

「人聞きの悪い事言わないでくれるかしら? 御門みかど? それに、どこに行くか分かってるの?」


 うわ。最低の女だよ! 


 俺の口から目的地を言わせて。


『別にその場所じゃないけどなあ。でも、気になるなら行きましょうか?』みたいな。


 口実に俺を利用すんな!


「ラブリーでセクシャルな高級ホテルで休息だろ! 夜のプロレスリングでも開催するのかな!」

「さ、咲さんがそんな所に寄り道しないでしょ!? へ、変な事言わないの!」


 むっつりな祀理まつりちゃん。


 しどろもどろだな。


「……あえてふざけて答えてるのかしら? 私の意図を先読みしすぎて不快だわ。いえ、これは、私の落ち度ね。素直に行き先を――」

「女子児童が被害にあった現場の公園だろ? まさに、新規の心霊スポットじゃないか。あんな所に、何の用があるんだい?」


 あからさまに発言をさえぎった為なのか。


 たかさき君が。


 ぷんぷんしている気がするな。


 あははは! 愉快、愉快でござる!


「もう! これだから御門みかどと関わりたくないのよ。……事件現場の公園に献花台が設置されてるから、お供え物をね。それと、ご冥福をお祈りに」

「流石、咲さん。優しい心遣いです。私も、同行しますよ? いいよね? 御門みかど君?」

「……どうなっても知らないからな。仕方ない、条件がある。君達二人は、事件現場の公園の献花台だけ向かう事。約束を破れば、ひんむいてセクハラするからな!」

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