世界の終わり、セカイの始まり

作者 レミィ

5

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★★★ Excellent!!!

奇妙な青年フタミフウトと奇妙な女の子カノカズサという『奇妙』な二人によるダークサイド小説。一般的に『セカイ系』というのはSFや社会派小説にある緻密な科学設定や生々しさのある政治描写などをヌキにして、自分の周囲の日常のドウデモイイ話と、宇宙の破滅だの世界の消失だのというブっ飛んだ話を直結させるタイプの物語のことをいうわけですが、そのイミでこの小説は度を超えてセカイ系だ。この小説では『広いセカイ』と『自分の周囲の日常』がそもそも区別されていない。周囲の描写は違和感や反復で徹底されていて、認識できるものを全て常に疑い続ける。カノカズサの一人称とフタミフウトの一人称が交互に書かれるけど、カノカズサの文章はフタミフウトへのラブレターみたいなものだし、フタミフウトの文章はカノカズサへのラブレターみたいになっていて、これはセカイ系のひとつの極まりだといっていい。なぜならここでは『社会性のうちの一つである読者さえ排除された純粋なセカイ系的恋愛』が延々と繰り返されるからだ。

※ここからネタバレあり

観測者であるらしいウィアードはまさに読者のことと思う。ウィアードは「世界を救うたび」に「その世界に暮らしたい」と思うらしい。面白く気持ちのいい作品に出会うたびにこの世界に暮らしたいと思うのはだいたいの人がわかることだと思う。ウィアードがフラっと消えてから、二人の歯の浮くようなセリフには拍車がかかり、ついに世界を超えて観念的な何かになる。こういう観念の描写はたいていの場合退屈でかったるいものだけど、この作者の場合は奇妙な魅力がある。セカイの型がズレるような、今までのセカイへの違和感の正体が現れるかのような奇妙なカタルシスがあって、これは作者独自のものだ。フタミフウトとカノカズサは、作品であることをやめ、『世界の外の何か』になっていく。そのシーンには妙に触感がある。