燃油サーチャージ

 国際宅配便の某会社から、見積もりをいただいた。


 この価格なら何とかやってみる価値はあるだろうと思っていたのだが、よく見ると当たり前なのだが、この価格以外に燃油サーチャージがかかるという。


 燃油サーチャージとは原油高の際、燃料代の一部を利用者が負担する仕組みである。


 運送会社などではこれがなかなかできないで苦戦している訳だが、航空運賃に関してはごく当たり前に運賃に上乗せされる。今朝のニュースでいろいろとやっていたので、ご存じの方も多いことだろう。


 その、燃油サーチャージが、この6月から過去最高の水準で課金される。こちらの会社の場合は、通常の運賃に対する34%が課金される。運賃の見積もりが仮に3000円だとすれば、実際の請求は34%のサーチャージが課金された4156円となる。


 私がやってみようと思っている商品は、低価格スタートでせいぜい$50-$100程度の価格見込みの商品である。この燃油サーチャージは利益をそのまま食いつぶすような形となるので、商売としてはかなり難しくなる。


 きちんと落札者に請求する形ももちろんあり、私はずっとこれでやってきたのだが、やはり長い間休んでいたアカウントをいい状態に戻すためには、少し数を売らなければいけない。安くても、あまり儲からなくても、低価格スタートのオークションの方が確実に販売はできる、実績を作ることはできるので、長い目で見ればこっちの方がいいかなと思っている。


 しかし、コロナにせよ、原油高にせよ、私がやってみようと思っているこの越境ECと呼ばれる仕事は、逆境が続いている。もちろん、上手にやって利益を上げている人は多いし、そのやり方を見習えばできないこともないのだが、私は人を使ったり、在庫を持たずに出品したりする方法が得意ではない。


 利益はさておき、とりあえず復活に向けた実績を作っていこうと思っていたのだが、それにしても売っても殆ど利益が出ないのであれば、モチベーションも下がってしまうというもので、やっぱりこのまましばらくは様子を見た方がいいのかな、という気持ちにもなってしまう。


 燃油サーチャージは、この先も下がることはなく、上がることだけが予想されている。そうなってしまったとき、果たしてこれを仕事の一部として、私みたいな個人が続けていくことができるのかどうか。


 とりあえずいくつか販売してみて、様子を見てみようと思っている。


 そして思うことは、日本のトラック輸送はこれほどの原油高なのに、大きなサーチャージもせずに、よく頑張っているな、ということである。今日の報道のように、運送会社の運賃に対するサーチャージが話題になることは殆どない。


 日本という国は、チップ制度がない事に象徴されるように、サービスされるのが当たりまえの国となっているが、これを根本的に見直さなければ、この先この国は破綻するだろうと私は考えている。


 燃油サーチャージは、この時期海外旅行をしようなどと思っている一部のお金持ちだけの問題ではない。当たり前に、指定した時間に商品が届くこの日本の物流の仕組みの恩恵を受けている、全ての日本人にも影響するべきものなのである。


 政府は現在、石油元売りに対して補助を行っていて、原油高対策をした気になっているが、これもまた危険だと思う。原油高にて発生する各種の差額は本来、消費者が負担するべきものだ。政府の財源は私達が負担した税金であり、将来負担しなければならない国債である事を忘れてはならない。


 あれやこれやが値上げになるというニュースがよく流れるが、これは当然のことである。これからがちょっと怖い気もするが、これから先はそう言う時代になっていくのだと思う。


 もしかすると、便利すぎる生活に対する、世界からの警告なのかもしれない。


 燃油サーチャージに嘆くだけではなく、これから起こってくるであろう、さまざまなことを考えてみる必要があるだろう。


 

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