人間関係

 人間関係に悩む人は多い。


 私の場合、それほどでもないとは思っていたのだが、今いる運送会社でちょっとした事があった。


 私の賃金は少し特殊で、日給月給という仕組みで給料が支払われている。仕事があるのが大前提で、仕事に出た日数×日当で給料が決まっている。


 かつてダンプカーの運転手を募集した際に使われていた方法で、この日給月給だと、雨で突然仕事がなくなってしまった際など、会社側は私達に給料を払わなくていいことになっている。その代わり、一日当たりの日当は、正社員に比べると同じか、若干高めかもしれない。


 その事を知ってか、影で私のことを、「あいつは俺たちよりもたくさん給料をもらっているんだ」と嫉んでいる、私の同僚がいたらしい。他の会社の人と一緒に出入りしている現場で、他の会社の人から聞いた話である。ちなみにそんなにもらってはいない。


 自分でも会社の中ではそれなりに上手く立ち振る舞えていたと思っていたので、これは少しショックだった。昨晩もそのせいもあってかあまり元気が出ず、カミサンに心配をかけてしまった。


 今朝、会社に出勤すると、その人は何事もなかったかのように喫煙所でタバコを吸っている。年上の話し好きの人なので、いつものように一緒に話をして、一日をスタートした。私の事をターゲットにしているなら、私のことは避けて通るはずだ。


 影ではそう思われているのかもしれないが、顔を突き合わせて話をすれば何でもないことである。あまり考えすぎるのも良くないなと思って、昨日のことは忘れることにした。


 社員と日給月給での雇用とでは、会社の待遇が明らかに違う。交通費はもらえないし、制服の貸与もないし、仕事がなければお金をもらうことができない。


 社員なら、制服を着て、交通費をもらって、仕事がなくても会社に出勤すれば、ある程度までの給料は保証されている。


 この違いを私は痛切に感じているので、社員が本来やるべき仕事には手を出さないようにしている。


 例えば、仕事が早く終わって、2時とか3時とかに帰社した場合、社員は原則午後5時位までは会社に残って、言われる用事をしたり、何もせずに会社に残っていなければならない。会社としては、給料を保証する上で、これは当然なのだ。


 一方で私は、早く終わった日には、周囲に社員がいようとも心を鬼にして、早く家に帰るようにしている。一日の日当分の運賃を既に稼ぎ出しているのだから、これは全く問題ないのだ。


 おそらくこの辺りの私の動きに不信感を抱いている人もいるだろう。


 ちなみに今、日給月給の仕組みで給料をもらっている人は、私を含めて二人しかいない。もう一人も、今は仕事がなくなって、全く出勤していないような状況だ。


 こんなのはまだいい方なのだろう。若い子達はSNSでいじめられ、自ら命を絶ってしまうこともあるように、人と人との関係のこじれは、かなり精神的に堪えるものだな、ということを、今回あらためて実感した。


 ちなみに私はちょっとだけ悩みはしたものの、今朝本人と話をしてみて吹っ切れた。こんな事を気にしている必要は全くなく、私は私の道を行けばいいのである。


 嫌なら会社なんて辞めて、自分で何かすればいい。


 日本人に生まれたなら、最低限の生活は憲法で保証されているのだから、あまり深く考えない方がいいだろう。



 

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