私の勤務する運送会社は、港の近くにある。


 かつて屋久島に興味を持った頃、港はとても重要な位置を占めていた。


 屋久島に入るには、海からのルートと空からのルートがあるが、私はどうしても自分の車で行きたかったので、フェリー屋久島2によく乗った。


 その頃の屋久島は世界自然遺産に登録される直前の感じで、少しずつ盛り上がりを見せてきた時期だったように思う。


 当然のことながら、フェリーに積載できる車の数は限られているので、上手くやらないと予約が取れず、屋久島に上陸する事ができない。


 仮に行きが取れたとしても、帰りも取らねばならない。


 この時期、5月の連休と、8月のお盆休みは予約が集中し、結構大変な思いをしたと記憶している。記憶が定かではないが、はじめの頃は、屋久島パインに頼んで予約を取ってもらったりしていたかもしれない。


 屋久島行きのフェリーは鹿児島港から出港するが、鹿児島県は沢山の離島を抱えているせいもあるのだろう、港の周辺は人や商店が多く、賑わいを見せている。私なんかはいつも早く着いてしまうので、車の中でぼーっとしている時間が長かった。フェリーに乗って屋久島に上陸するという目標がただ一つだったので、飲みに行くとか遊びに行くというような選択肢はなかった。


 今、私が働いている職場の近くの港は、鹿児島港に比べると、全く趣が異なる。ハイシーズンを除けば観光客は殆ど見受けられないし、そもそも基本的に工業港なので、仕事の車やトラックなどがメインとなっている。フェリーも観光の乗用車は二の次で、トラックをはじめとする商用車の海上輸送をメインに収益を上げているような感じである。


 そんな中昨日は、会社の近くで、名古屋や広島といった他府県のナンバーを付けた車を何台か見かけた。車はぴかぴかだし、屋根に物を積んでいたりなど何だか観光オーラが出ているので、見ていると面白い。


 こうして地元港近くで他府県ナンバーの車を見ると、かつて私が屋久島行きにわくわくしながら、鹿児島港でフェリーの出航に向けて待機していた時のことを思い出すのだ。


 船には独特の雰囲気がある。


 一方で、船が走る相手は海である。屋久島行きに限らず、船に乗ると言うことは常にいつ急変するともわからない、天気との戦いであることを、決して忘れてはならない。


 船に限ったことではない。飛行機だって、高速道路だって、最近では電車だって、いつどうなるかわからない危険因子は潜んでいる。


 万が一の際には決して無理をしてはならない。


 場合によっては欠航や運休や通行止めになってしまうこともあるかもしれないが、人間は自然には絶対に勝てないことを常に頭に入れ、行動していく必要があるだろう。


 今回悲しい事故が起こってしまった。犠牲者の方々のご冥福をお祈りすると共に、二度と同じような事故が起こらないよう、祈るばかりである。


 原因の究明と再発防止対策を、国にはしっかりとしていただきたいと思う。

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