忘れない会話
「大丈夫?よく寝られた?」
朝、身支度を終え、もうすぐ家を出ようというときに、カミサンがトイレに起きてきた。
「ああ、大丈夫だよ。お陰様で爆睡です」
昨日夜は担当の大型トラックのタイヤ交換、スタッドレスタイヤへの履き替えをして帰ってきたので、三時間くらい家に着くのが遅くなってしまった。
家に帰ってから体重計に乗ると、2キロほど痩せていた。
無性に炭酸飲料が飲みたくなったが、我慢した。
身体に負担がかかった証拠だ。
新しいスタッドレスタイヤを倉庫から取り出して運び、作業場に入れた担当の大型車から取り外し、古いタイヤを外して新しいタイヤを取り付けて、空気を充填して、トラックに取り付ける。これを六回、一人でやって帰ってきた。
30代の頃は何ともなく、40代も何とか大丈夫だったが、50代になるとかなりくたびれてしまうようになった。
もっと早くできればいいのだが、タイヤに空気がなかなか入らなかったり、取り付けるのに難儀したり、そもそも道具の置き場が変わっていたり、いろいろとあって、三時間くらいかかってしまう。
昨日の夜は久しぶりにへろへろの体で家に到着した。
しかし、カミサンは調子がいいようで、マックスバリューのいなりは半額になるからすごいとか、美味しそうなおかずは実は山形から来ているんだとか、コーンフレークはいつも安いけどブロッコリーに入れる弁当用のマヨネーズは高いとか、新しいイオンはさすがに混んでいるとか、キングヌーの井口(さん)が首を振りすぎて「首が痛い」とツイートしていたとか、常田さんはやっぱり天才で、かっこよすぎるとか、あの脳外科の先生は有名だけど評判が悪くて口コミに書かれているとか、この病院は心臓カテーテルアブレーションの手術を年に200回以上やっていて専門なのだとか、自分と同じ心臓を患ってしまっている友人の検査の結果が出て安心したとか、今思い出しても不思議と忘れないこんな盛りだくさんの話題を私に投げかけ、楽しんでいた。
「古館のニュースにしておいて」
「いつの話?今は大越たんだよ」
疲れ果ててチャンネルを回す気力もなく、久しぶりに久米宏の後釜の番組を覗いてから寝ようとカミサンにリモコンの操作をお願いしてしまった。こんな事を頼んだのは初めてだ。
疲れてしまいニュースなど頭に入るものでもない。ただただ遅くなってしまった夕飯後すぐに寝るのは気がひけたので、ちょっと時間を置いてから寝ようと思った。外の自販機に100円のでっかいペプシを買いに行こうかと思ったが、カミサンがマウントレーニアのソイラテなるものを買ってきてくれていたので、これを飲みながら就寝前のリラックス体制に入った。
寝落ちもせず、適当に切り上げて自分の部屋の寝袋で上手く寝ることができ、目覚めもそこそこだったが、起きたら身体全体が痛く、疲労感満載で、こりゃ大丈夫かなというレベルだった。
朝の食事をして歯を磨き風呂に入ったらだるさも抜けてきて、何とかなりそうだった。制服に着替えて準備した所で、カミサンとのご対面だった。
「そっちこそ大丈夫か?動悸するの?」
「大丈夫だよ。今日も気を付けて頑張ってね」
「そっちもね」
胸に手をあてているので気になったが、カテーテルアブレーションとその後の電気ショックで、不整脈は何とかなっているようで安心した。毎日元気に仕事に行けるようになったので、ほんとうによかった。
私はおそらく30日まで仕事で、カミサンは今週金曜日に一年で最大のピークを迎える。私の方はこのタイヤ交換が終われば、もう安心だ。落ち着いたら今週末にでも、とあるファミリーレストランに食事に行こうと計画している。
今年もあと少し、がんばろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます