日給月給

 今の会社に入る時の求人票には、気になる記載があった。


 雇用形態という箇所に、社員とではなく、その他の形態、と書かれていた。


 調べて見ると、日給月給、との事だった。


 仕事は、東日本大震災からの復興作業に伴う、ダンプカーの運転手。震災発生当初は沖縄から北海道まで、全国各地津々浦々のダンプが走っていたが、私が始めた頃は、当初のご祝儀的な意味も隠っているような、比較的高い運賃も、落ち着いてきていた。


 しかしまだ、復興という名の膨大なる仕事があり、稼げる状況である事に変わりはなかった。地元で被災した当社の社長がそれを見過ごすはずはなく、オークションでダンプカーを、それこそ山で買ってきて、沢山の運転手を雇い、復興事業に精を出す日々だった。


 会社にはかなりの数のダンプがあったので、それに伴い運転手も必要だった。ダンプの仕事というのは、足元がぬかるむことから、雨が降ってしまうと、中止になってしまう現場が殆ど。そうなると、運送会社に運賃は入って来ず、運転手はその日の仕事がなく浮いてしまう。


 こうなった時、社員で契約しているのなら、会社に出社し、何かしらの作業なり、他のトラックに乗って別の仕事をしたり、と言うことになる。しかし、このケースは老舗のダンプ専門運送会社に時折あるものの、やっつけで事業を行っている会社では殆ど見られない。雨の日、沢山の仕事なし従業員が発生してしまえば、会社にとってはリスクとなるからだ。


 このような背景から大抵は、その他の契約となる。これは日給月給と言い、ダンプカーに乗った日だけ賃金を支払いますよ、という契約。会社にとっては働いてくれた日だけお金を払えばいいので、ダンプカー運転手の賃金を考える際にはとても都合が良い。一方、雨が降ってダンプの仕事が発生しなければ、運転手に仕事はなく、賃金はゼロとなる。会社には都合が良く、運転手には辛い制度かもしれないが、人によっては適当に休みがあるのでいい、平日に休めるのでいい、という人もいる。私もその一人だった。ちなみに、きちんと働いていれば、保険や年金や税金の天引きなどは社員と同様に扱ってくれる。


 私は一応の個人事業主で、家でインターネットを使った仕事をしていたので、(一応今もしている)その旨を会社にも伝え、仕事ができる日だけ働かせて下さい、というスタイルにしてもらった。


 当初は20人ほどいたダンプの運転手も、復興の仕事が落ち着くにつれて、会社を離れて行った。今は私を含めて4人だけが残っている。


 私はこの流れで来ていた一方、かつてタンクローリーのトレーラーに乗っていたこともあり、とある仕事をしませんか?ということになった。この仕事は工場の仕事で、安定しており休みもあり、拘束時間もそれ程長くはなく、私に出来そうな仕事だったので、やらせてもらうことにした。


 会社からは固定給の提案があった。これはすなわち、正社員ではいかがですか、ということだったのだと思う。しかし同時期に実家に帰る予定があり、四日ほど休まねばならないことになって、その月の給料を見てみると、有給なんて頭は毛頭なく、一日あたり一万円、四万円もが引かれてしまっていたので、この仕組みは辞退し、話し合いの末、ダンプと同じ感じで、トレーラーなので日給を少し上げましょう、という事に落ち着いた。


 こんなプロセスを踏み、今に至っている。


 私は今でも、給料的にはダンプの運転手なのだ。会社も本人も納得しているので、これでいい。


 今日のニュースで報道があったが、東京都の議員が無免許運転で人身事故を起こして逃げ続けており、未だに行方がわからないという。再三の呼び出しにも応じず、当然、議会に出席することもしていないのに、この議員には、月額136万円の議員報酬が支払われ続けている。


 格差の是正をお願いしたい所である。



 

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