工房フラワーズさん


 屋久島にいる頃、「工房フラワーズ」さんというご夫婦と知り合いになった。


 年の頃は同じ位のご夫婦で、物作りに長けている方達である。


 屋久島の流木を加工して小さな工芸品を作ったり、携帯電話のストラップなどを作って販売されていた。


 安房という町にある民宿の「華のや」のご主人を通して知り合いになり、時々飲みに行ったり、私もおかずのとびうおを持って行ったりしていた。


 当時の私はWeb日記が上手く行き、ホームページはYahooカテゴリーに登録され、とびうおのお裾分けもそこそこの売上げがあり、様々なメディアの取材が舞い込み、少し有頂天になっていた。


 毎日日記を書き、自分を発信し、結果としてそれが集客に繋がっているんだ、という事実に強いこだわりがあった。


 やがて流れで工房フラワーズさんもHPを作り、私の所に相互リンクの依頼をしてきたのだが、何故だか私はこれに腹が立った。自分が一生懸命日記を書いて集めたアクセスを取られてしまうような気がしたのだ。


 先方様はいい方達だったので大丈夫ではあったが、今から思い出しても恥ずかしい限りなのである。


 屋久島でとびうおを販売していた事もあり、こちらに来てからも、私は自分のネットショップのようなものを行いたい気持ちを捨てきれずにいた。商品の検討にあたって、フラワーズさんの商品を仕入れることはできないか打診してみたが、「自分のお店で手にとって買って欲しいので、通販は考えていないんですよ」とのことで、仕入れは叶わなかった。この想いはやがて、自分では商品を扱わずに紹介するだけのアフィリエイトサイトの構築へと発展してしまった。


 工房フラワーズさんはどうされているのか、ちょっと調べてみると、今は名古屋にいらっしゃった。創作活動は続けられており、全国のあっちこっちで個展を開催したり、独自のルートで独自開発、独自制作の小物を、主にネットで販売されている。私がミンネで今更やろうと思っていたことを、既にプロの手腕で当たり前になさっている。もちろん、商品はプロの製作であるから素晴らしい物で、通販のシステムやプラットフォームを見るなら、時代が彼らに追いついたというような感じさえする。


 彼らを一時ではあれ、あしらってしまった私はどうだろう。

 

 商品の提供をしてもらえなかった事から考えて辿り着いたアフィリエイトのサイトは時代の流れと共に消え去り、得意であった物書きも極めることはできず、今はかつての事業の損失を、非正規のアルバイトで返済しながら、この先の事を考える余裕などなく、今を何とか凌いでいるというような、恥ずかしい状況だ。


 やっぱり、一つ筋が通っている人は強い。工房フラワーズはさすがだ。


 私はやっぱり書くことが好きなので、これで何とかならないものかと数十年考えていろいろとやっているが、未だに何ともなっていない。


 ただ、実感として、屋久島にせよ、田舎暮らしにせよ、移住にせよ、都会脱出にせよ、時代が追いついてきたような感はある。


 この感性を大切に、オリンピック選手がよく言っているように、この先の人生を「楽しめれば」いいのかなと、最近は思っている。


 あんまり考えすぎるとうつ病になってしまうので、毎日を適当に暮らして行こう。


 

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