海が見える。


 東日本大震災後、私達の住む地域のほぼ全ての海岸線には、防潮堤が建築された。甚大な被害があったし、国を挙げての対策であるから有り難いのではあるけれど、海が見えなくなってしまった事により、寂しくなってしまった感は否めない。


 今私が仕事で待機している場所は、かろうじて防潮堤が建築されていない海のそばで、ここには東北一いい波が立つと評判の砂浜が広がっている。


 仕事中や待機中、時々この海を見ている。


 真冬の海の中はとても寒いだろうに、どの時間でも何人かがサーフィンをしている。


 海の下の形状がいいのだろう。素人目に見ても、とても綺麗な波が立っており、それを見ながら日頃の疲れを癒している最近である。



「どうして屋久島に来たのですか?」


 屋久島に住んでいた頃、事あるごとによく聞かれた。


「海と山と自然が好きで、水が美味しいし、島だからです」


 というような答えを返していた私。


 

 ここ最近では自然を楽しむ時間的、経済的、精神的余裕もなく、ありたきりの毎日を過ごしていたが、こうして一日に僅かな時間でも海を見ることができると、心が落ち着く。


 仕事は大変だけど、朝日に照らされてキラキラ輝く水面と、綺麗にブレイクしている波を見ていると、日々の疲れも癒され、今日もがんばろうという気持ちになる。


 ほんの僅かな期間ではあったけれど、海を仕事場とする漁師をしていた。この海も屋久島と繋がっているのだと思うと、当時のことなどが思い出されて感慨深い。


 いろいろと大変だけど、今日も、これからも、がんばって行こう。



 

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