ケロシン

 今年はラニーニャの影響なのか、例年に比べるとかなり寒い。


 我が家は南東北の某都市にあり、冬は石油ストーブを焚いている。


 中にはエアコンの暖房機能で暖を取る家庭もあるようだが、やはり今年くらいの寒さになると、石油ファンヒーターで灯油を焚かねば寒い。


 東京の世田谷に住んでいた時は、もう50年近くも前になるので、東京都といえどもそれなりに寒く、外においてあるバケツの水が凍っていたのを覚えている。暖房は昔ながらのくるくると芯を出して焚くタイプの石油ストーブと、晩年では火鉢なんかもあった。風通しの良いあばら家だったので、これでも大丈夫だった。東京ガスのガスで炭に火を点け、母親が火の管理をしていた。


 東京の多摩ニュータウンに引っ越したら、これがまたびっくり、各部屋に東京ガスのガス管が配管されていた。私の部屋にも小さなストーブが設置されたが、団地サイズの四畳半の部屋でガスを焚くのが怖くて、殆ど使わなかった。メインの部屋ではもちろん、ガスストーブを焚いていた。当時はまだ、電気で送風するタイプのものではなく、停電しても使えるタイプのガスストーブだった。


 こちら南東北の主力はやはり石油のファンヒーターだ。義父はでっかい部屋に一人でどんがりと住んでいる。必要になく大きなファンヒーターを買い、灯油代も何も気にすることなく、本能のおもむくまま、部屋にいれば灯油を焚きまくる。今はデイサービスで週に三日部屋を留守にするので比較的良くはなったが、それでも灯油の消費量はおどげでない。


 私達夫婦の部屋にも石油ファンヒーターがある。ファンヒーターは5年位すると調子が悪くなり、やがて寿命を迎え、壊れる。去年もうだめかという感じだったが、今年も何とかがんばってくれている。


 今年は妻が病気をしてしまったので、彼女が部屋にいるときには灯油代の事はさておき、まずは暖かくしてあげるようにしている。



 この二系統をこの寒さでばんばん焚いていると、とんでもないことになる。


 私がこちらへ来て、タンクローリーで灯油をホームセンターなどに配送していた時は、確か18リットルで700円台の時もあった。しかし今は、配達価格で18リットル1,422円もする。


 我が家は義父と地元の米穀店との長年の付き合いがあり、この店から以外は殆ど石油を買わない。毎週決まった曜日に配送してもらっているが、寒いときには一回来てもらうと一万円以上になることもよくある。今年は義父が週に三日いないとはいえ、おそらくそんな感じだろう。


 我が家の光熱費は、かつては義父が全て払い、私達が一部を負担する形を取っていた。義父が入院したので、一時期は全てをこちらで払うようになったが、灯油だけは自分勝手にバンバンと焚いてしまう義父、スタンドやホームセンターで調達するのを嫌う義父に負担してもらい、これで釣り合いを取るようにした。


 家には18リットルのポリタンクが5つあるが、今週は明日の配送までに、これらが殆どなくなってしまう勢いだ。裏には風呂とお湯を沸かすためのボイラーのタンクもある。おそらくとんでもない値段になるだろう。


 義父は無駄遣いを何とも思わないので、始末が悪い。


 こんなことを書いてしまっていいのか、介護保険が二割負担になってしまう程の年金をもらっているのに、娘が大病をしても、一銭も金をよこさない。


 私は良心と戦いながら、今日も石油ファンヒーターを焚く。

 さて、今週はおいくら万円なのか、楽しみだ。



 

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